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「コロナ禍だからゴメン」とリストラする経営者にSDGsバッジをつける資格はない (1/3ページ)

 希望退職実施企業の3分の1は黒字

 コロナ禍で企業のリストラの動きが加速している。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「かつてはリストラすることを恥に思う経営者が多く、やむなく実施する場合も転籍・出向先を探した。90年代以降、資質に欠けた経営者が増え、人員削減で延命を図る企業が増えた」。そこで溝上氏が考えた「不幸を生まないリストラ」の5つの条件とは--。

 「社外でのご活躍を」止まらない企業のリストラの作法がひどい

 コロナ禍で拡大した企業のリストラが今も収まる気配がない。上場企業の希望退職の募集企業・人数は2020年に93社、1万8635人だったが、21年6月3日時点で50社、1万225人と1万人を超えている(東京商工リサーチ調査)。筆者の調査ではその後も5社増え、7月3日時点で計55社、1万685人に達している。

 どんな企業がリストラをするのか。

 もちろん、コロナの影響で赤字決算に陥った企業も多いが、製造業を中心に3分の1の企業は黒字企業だ。ワクチン接種でコロナ収束の兆しが見えてきたとはいえ、今後も昨年を上回る勢いで実施される可能性が高い。

 希望退職者募集という名の本格的なリストラが始まったのは1990年代のバブル崩壊以降だ。90年代後半の平成不況に続き、2000年代のITバブル不況、リーマンショックと断続的に大型リストラが繰り返されてきた。

 その間のリストラの現場を長年にわたって取材してきた。最初は「奥さんと子どもはいるか」という家族の状況を考慮しながら腫れ物に触るようにおっかなびっくりの姿勢で対象者を選定してきたが、そのうち株主の支持を得られると、年齢を基準に大胆かつ大規模にバッサリと切る姿勢に転じ、やがて常態化していったという印象だ。

 再就職先を探すのは難しいのは百も承知で首切り

 そもそも、なぜリストラを実施するのか。

 言うまでもなく業績悪化などの要因で企業が生き残るために事業の縮小や新規事業による再建を図るために余剰となる人員を削減する必要があるからだ。

 しかし、それは会社の理屈であり、社員にとってはたまったものではない。

 希望退職募集の個人面談で突然「社外でのご活躍をお祈りします」などと言われたら誰もがショックを受け、怒りがわいてくるだろう。なぜなら、日本では中高年がターゲットにされるため再就職先を探すのは難しく、それは不況期ではなおさらだということを、言う側は百も承知だからだ。

 運良く見つかっても減収は避けられず、住宅ローンや子どもの学費も払えず、家族が路頭に迷ってしまうことになりかねない。

 業績が悪化する前に経営者は何かひとつでも手を打ったのか

 過日、人事コンサルティング会社フォー・ノーツの西尾太社長と対談する機会があった。その時の話の中で出てきたテーマのひとつが「不幸を生まないリストラ」だった。

 リストラありきの時代に、西尾氏は不幸を生まない方法とは何かを熟考しており、いろいろと考えさせられた。

 筆者も、これまで取材したリストラ案件の記事を振り返り、リストラに至る経緯や経営者の姿勢、社員の思いを検証し、自分なりに不幸を生まないリストラについて考えてみた。

 そもそもリストラの原因が業績悪化であるとすれば、業績悪化を招く前にやるべきことは次の2つだ。

 (1) 市場の動向を見据えて事業の縮小や新規事業領域への投資など構造改革に着手する

 (2) 事業縮小で余剰となった人員を新規事業要員として職種転換教育の実施や不足する部門への配置を行う

 これは経営のイロハであり経営者の責務であるが、これを怠り、業績悪化を引き起こせば明らかに経営者の責任である。ましてや社員のクビを切ることがあってはならないというのが1990年代初頭までの日本企業の不文律であった。

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