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「売れ筋商品を完コピ」やりたい放題のアマゾンに米政府すら手を出せないワケ (1/2ページ)

 アメリカの小売市場は、年々、「アマゾン化」が進んでいる。なぜアメリカ政府はアマゾンの巨大化を放置しているのか。小売りコンサルタントのダグ・スティーブンスさんは「政府の規制が本格化するには、まだ時間がかかるだろう」という--。

 ※本稿は、ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

 ■独占禁止法違反でアマゾン包囲が進む

 「その規定に違反したことがないとは保証できない」

 シアトルの本社からリモートで米議会下院に設置されたモニターに現れたジェフ・ベゾスは、そう説明した。ベゾスの言う規定とは、プライベートブランド(PB)の商品開発に外部事業者のデータを利用することを禁じたアマゾンの社内規定のことである。質問したのは、アマゾン本社のあるシアトルも含めたワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル下院議員だった。

 2020年の夏に米議会下院司法委員会はデジタル分野の競争環境について大手テクノロジー企業のグーグル、フェイスブック、アップル、アマゾンの4社を呼んで聴取するマラソン公聴会を開催し、各社に対して、倫理や競争上の問題について、議員から次々に厳しい質問が飛んだ。

 ジャヤパル議員の追及は、そのうちのベゾスに対する質問の一コマだ。これに対してベゾスは、アマゾンが開発するPB商品を決定する際、同社通販サイトでの商品カテゴリーごとの「集計データ」以外を従業員が見ることはできない社内規定があると主張した。

 ■出店業者の販売データはアマゾンに筒抜け?

 小売コンサルタントとして30年近くアマゾンの一挙手一投足を見守ってきた私に言わせれば、ベゾスのこの回答は馬鹿馬鹿しい。

 アマゾンのPBで販売する商品を決定する際、同社通販サイトに出店する外部事業者の販売データを略奪的な目的で利用していたかどうかに質問が及んだために、ベゾスがはぐらかそうとしたことは明らかだ。長年に及ぶ事業のなかで、その「社内規定」なるものが何度も破られているかどうか定かでないとベゾスが言うのは、笑止千万である。

 しびれを切らした別の議員が、「その『集計データのみ』とする社内規定は、特定カテゴリーで少なくとも2つの競合商品があれば、仮にそのうち一方が圧倒的なシェアを確保している商品だとしても、アマゾンはカテゴリーを問わずそのデータを自由に閲覧できると言っているのと同じではないか」と、ベゾスに詰め寄る場面もあった。

 たとえば、『ウォール・ストリートジャーナル』紙の調査報道によれば、アマゾンは、同社通販サイトに出店する外部事業者2社の販売データを利用して、車のトランク用整理収納ケースの設計に反映したという。

 問題は、その整理収納ケースの売上高の実に99.95%は「フォーテム」というブランドが生み出していたことである。

 ■検索データに基づいて人気ブランドの類似品を安く提供

 ここで読者にクイズを出そう。アマゾンのPB商品の整理収納ケースが最終的にどういうデザインになっただろうか。

 「フォーテムの商品と同じ」と答えた方、お見事、大正解である。アマゾンが商品検索データを事実上、完全な支配下に置いている以上、アマゾンに出店する販売業者でなくても、カモにされる可能性がある。

 次に、ジョーイ・ズウィリンジャーの話に耳を傾けてみよう。ズウィリンジャーは、ニュージーランド発のシューズメーカー、オールバーズの共同創業者である。素材にウールを使ったランニングシューズを手がけるユニークなブランドとして大成功を収め、販売は直販体制を採用している。

 これだけの人気を誇るオールバーズだけに、アマゾンは寸分違わぬほどそっくりのデザインのシューズを開発した。さらに恥の上塗りと言うべきか、アマゾンはその類似品に1足35ドルも下回る価格を設定していたのである。

 ズウィリンジャーはあるインタビューで「アマゾンは消費者のことをよくわかっていて、アマゾンでたくさんのユーザーがオールバーズを検索していることも筒抜けだった」と指摘する。

 「データからアルゴリズムではじき出したデザインでシューズを作ったからそっくりになったようだ。となれば、当然、オールバーズの需要に乗じて売ることも可能だ」

 ■アマゾン包囲網ができる日はまだ遠い?

 他にも公聴会では、アマゾンのスマートスピーカー「エコー」が原価割れの価格でダンピング販売されていて競合品の販売が阻害されていることや、ユーザーが音声指示で注文しようとすると同スピーカーの頭脳に当たるアレクサがアマゾンのPB商品を推奨する傾向が非常に強いといった指摘もあった。

 アマゾンの労働条件や労働組合つぶしといった問題も報告されているが、公聴会では、そこを追及するまっとうな質問は見られなかった。実際、ベゾスが質問に応じた3時間のうち、明確な回答を避ける場面が多く、たびたび「引き続き調査する」と約束するにとどまっている。

 ベゾスはアマゾンの影響力を懸念する声の広がりに、「当社が参入している小売市場は非常に規模が大きく、競争が激しい」としたうえで、「小売りには、いくつもの勝者を生み出す余地がある」と締め括った。

 このとおり、苦言と生ぬるい警告が続くだけの公聴会は、期待はずれの結果に終わった。この状況に何か手が打たれるにしても、どういう措置が講じられるのか定かでないが、アマゾンなり、他の怪物企業なりが政府の規制で大幅に事業を制限される日が来ると思っている人がいるなら、もうしばらく時間がかかると考えたほうがよさそうだ。

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