中国の4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は7・9%と回復基調が続いた。中国への依存度が高い関西の産業は、いち早くコロナ禍から回復した中国経済の恩恵を受けて輸出を伸ばしてきたが、中国の活況は一時的な“特需”の側面が大きく楽観はできない。米中対立などの政治リスクが高まる中、生産拠点が中国から台湾などにシフトする動きもあり、関西の輸出にも変化が出始めている。
関西は電子部品など電機メーカーが多く、中国との結びつきが全国で最も強い地域だ。中国は輸出先として国別トップで全体の4分の1を占めており、コロナ後の中国経済の回復が関西の輸出拡大を後押ししてきた。大阪税関が発表した貿易概況によると、近畿2府4県の今年の中国への輸出総額は、1月に前年同月比40・1%増を記録するなど、春節(中華圏の旧正月)の長期休暇があった2月を除くと5月まで二ケタの伸び率が続く。
一方、重要な変化も起きている。中国向けの主力だった半導体などの電子部品が昨年9月以降、1~3割の前年同月割れが続いているのだ。りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「電子部品は月額100億円規模の輸出減が続いており、一過性の現象ではない」と指摘。米政府による中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)への制裁など米中対立が深刻化して以降、「中国から台湾へという生産拠点のシフトが顕著に確認できる」と分析する。
関西から中国への輸出が全体的に好調だったのは、外需による中国の景気拡大が大きな要因だ。中国にとっては先進国の景気回復と、コロナ禍によるアジア新興国からの輸出落ち込みという追い風が吹く。
中国国内で消費されるスマートフォンや電気自動車(EV)向けの部品などについても関西からの輸出は堅調だ。ただ中国の内需は、所得の伸び悩みや中小企業の資金繰り悪化など不安要素が少なくない。丸紅中国法人の鈴木貴元・経済調査総監は「中国の内需はサービス消費が低調だが、商品の消費はまずまずで、日本からの輸出に悪影響は出なかった」と分析する。
関西圏の中国依存は今後も続くのか。「中国での売り上げが圧倒的に大きく中国依存は変化しない」(鈴木氏)との見方もあるが、中長期的には米中対立をはじめとする政治リスクや人件費高騰による生産拠点としての魅力低下、経済成長の鈍化など中国依存度を低める要素は多い。(西見由章)