金融

中国の景気回復にひずみ 「爆買い」の影に「寝そべり主義」

 中国国家統計局が15日発表した2021年4~6月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動の影響を除く実質で前年同期比7・9%増で、5四半期連続のプラス成長を達成したが、1~3月期(18・3%増)からは大幅に鈍化した。世界に先駆けて新型コロナウイルス禍からの回復が進んできた中国経済に一服感が出ている形だ。政府が後押しするインフラ投資や不動産開発が活況を示す一方で、回復が鈍い雇用や所得を背景に個人消費は力強さを欠く。そうしたひずみは消費の現場にも表れており、景気の足を引っ張る恐れがある。(中国海南省三亜 三塚聖平)

 南シナ海に浮かび、「中国のハワイ」とも呼ばれる海南島(海南省)。その中でも、中国有数のビーチリゾート地として知られるのが南端に位置する三亜(さんあ)だ。海岸近くには外資系高級ホテルが並び、中国各地から観光客が押し寄せている。現在、特ににぎわいを見せているのが免税店だ。

 「平日でも1時間待ちだけど、来店客は次から次へとやってくる。高級なら高級なほど行列は長い」

 5月上旬、三亜の大規模免税店の女性係員は忙しそうに話した。建築総面積は東京ドームの約2・6倍で「世界最大規模」という施設内は、海外高級ブランドの紙袋などを手にした来店客でごった返していた。

 海南島では昨年7月、1人当たりの免税購入限度額が年間3万元(約50万円)から10万元に引き上げられた。それにより、コロナ禍で海外旅行に出られなくなった国内の富裕層の「爆買い」の受け皿になった。高級宝飾店前で並んでいた新疆(しんきょう)ウイグル自治区の経営者男性は「ショッピング目的で来た。今日だけで5万元は買う」と笑顔を見せた。

 海南島に限らず高額品消費は好調だ。統計局が発表した1~6月の小売売上高でも、宝飾類は前年同期比約60%増と伸びが目立つ。

 一方、懸念されるのが雇用や所得の回復遅れだ。今年1~6月の都市部の新規雇用は698万人。前年同期を約24%上回ったものの、コロナ流行前の2019年1~6月(737万人)には届いていない。コロナ禍で景気刺激策として行われた金融緩和が不動産価格高騰を招いており、若年層を中心に生活実感が苦しくなっていると指摘される。

 そうした現状を背景に、若者の間では「トウ平(とうへい)主義(寝そべり主義)」が流行語になっている。お金を使う消費を避け、結婚もしないといった“草食系”のライフスタイルで、競争や厳しい生活に疲れた若者の間で共感が広がる。

 こうした風潮に対し、習近平指導部は「経済成長の足かせになりかねないと警戒を強めている」(中国メディア関係者)。5月には、中国共産党中央の指導下にある光明日報が「トウ平族は明らかに、経済・社会の発展にとってためにならない」と論評で批判した。

 7月に創建100年を迎えた共産党は改革開放政策の下で経済成長を政権維持の鍵と位置付けたため、景気悪化を避けるために刺激策を打ってきた。その副作用といえる住宅価格高騰などが若者や中間層の生活を圧迫しており、今後の景気回復シナリオにも影響を与えかねない難しい状況に直面している。

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