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富士急社長に鉄道分社の狙いを直撃「リストラでなく、地域密着へ」

 富士急行は、山梨県の大月駅(大月市)と河口湖駅(富士吉田市)を結ぶ鉄道事業を分社化すると4月28日に発表した。富士山に最も近い鉄道であり、同社の祖業の1つだが、発表はプレスリリースのみ。この日はJR東日本が民営化後初の最終赤字を発表するなど大ニュースの陰に隠れ、ほとんど報道されなかった。分社化にはリストラの懸念も付きまとう。そこで堀内光一郎社長に分社化の狙いを直撃した。

 創業社名を復活

 今回の分社化は、富士急が出資して新会社を設立し、会社分割によって鉄道事業を新会社に継承させる吸収分割方式をとる。分社化後は富士急の100%子会社となる。新鉄道会社の社名は「富士山麓電気鉄道」だ。昭和4年の創業時の社名で、35年に現在の「富士急行」に変更する前の社名を復活させる。

 もともと、分社化を発表した際、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、令和3年3月期決算で最終赤字転落が見込まれていたことから、リストラの一環ではないかと推測されていた。しかし、堀内社長は、こうした見方を真っ向から否定。「実は約30年かけて、バス事業の分社化を進めていた。営業所単位をそれぞれ子会社にして、昨年、本体にあった御殿場営業所を『富士急モビリティ』として分社化させ、バス事業の分社化が完了した。そして次は鉄道という順番だった」と説明する。

 各事業を分社化するのは「小回りが利き、地域密着を徹底させると同時に、経営責任を明確にする」ためだという。富士急本体はグループの資産を保有する持ち株会社として子会社へのガバナンスを利かした上で、分社化によって個別事業の経営判断を早くする「アジャイル(素早さ)」重視の攻めの経営スタンスを強調する。

 インバウンド生かす

 鉄道分社化がこの時期だったことについては「コロナで業績が悪化しているのはたまたまだ。それよりも過去数年間にわたっての訪日外国人客(インバウンド)効果が大きい」と語る。地域の人口減少、モータリゼーションで地方鉄道の業績は振るわず、以前は富士急行線も赤字路線だった。それがインバウンド効果で黒字転換したのだ。

 堀内氏は「赤字路線の時に分社化すれば、経営破綻を意味する。だが、黒字であるなら独立採算で企画や工夫によって路線を活性化できる」と判断の理由を明かす。

 さらに「コロナによる赤字は一過性で、ワクチン接種の状況次第では来年の早い時期にインバウンドの動きが再開し始める」と予測。来年度以降に再び富士急行線を観光路線として業績を回復させて黒字化につなげ、それにより地域の基幹路線として持続させる狙いがあるという。

 県有地問題は「残念」

 一方で、富士急は山梨県との間で県有地問題を抱えている。山中湖村で県有地を借りて別荘地事業を展開しているが、県側は賃料が不当に安いとして「適正対価でなく、契約は無効。不当行為の損害賠償などを求める」と主張。富士急は「(これまでの契約に基づき)富士急に賃貸権があり、県に対する損害賠償責務を負ってはいない」と反論している。

 堀内氏は「これまで県の厳しい指導を受けながらも、県有地の開発や、さまざまな整備をともに進めてきたのに残念だ」と語る。もはや双方が提訴し、決着は司法の判断に委ねるしかなく、長期化は避けられない状況だ。(平尾孝)

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