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「東電管内で停電リスク」中国の“LNG爆買い”で危険度を高める日本の電力不足 (1/2ページ)

 ■この夏と冬には東電管内で「電力不足」が生じる恐れ

 「梅雨明け以降、猛暑が来たらまたこの年末年始のようになるかもしれない」。電力業界から聞こえていたそうした不安は、この猛暑で現実になりつつある。

 この冬の電力不足は予想外の寒波による電力需要の急増に加え、燃料である液化天然ガス(LNG)の輸送がパナマ運河のタンカーの停滞など特殊要因が重なり、電力燃料であるLNGの調達が困難になったことから引き起こされた。

 大手電力は稼働を止めている石炭火力発電所を急遽、再稼働したり、ライバルのガス会社からLNGの「おすそ分け」を受けるなどして急場をしのいだ。

 背に腹を変えられないとして、歴史的な高値を付けたスポット価格でLNGを購入したこともあり、大手電力の業績は軒並み落ち込んだ。

 さらに追い打ちをかけるように、この状況下に菅義偉首相肝入りの「脱炭素」の政策が加わる。

 経済産業省は5月、2021年7~8月と22年1~2月は電力需給が逼迫するとの見通しを明らかにした。夏はここ数年で最も厳しく、冬は東京電力管内で電力不足が生じる恐れがあるという。

 ■脱炭素政策で石炭火力が相次ぎ撤廃、需給バランスに崩れ

 電力の供給力の余裕度を示す「予備率」は北海道と沖縄を除き、7月に3.7%、8月に3.8%と見込まれている。一般的に予備率は3%が必要とされ、ここ数年では最も厳しい水準となりそうだ。さらに、22年1~2月は東電管内で予備率マイナスを予想している。

 経産省が「電力不足」を警戒するのは、脱炭素政策で環境負荷の高い石炭火力発電所が相次いで撤廃に追い込まれ、需供バランスが一気に崩れているからだ。電力会社の火力発電所は縮小傾向で、電力の安定供給に支障が出やすい状況となっている。

 経済活動の「血流」ともいえる電力が不足しかねないという一大事に、さらに新たな打撃が加わろうとしている。中国の「LNGの爆買い」だ。

 新型コロナウイルス感染拡大から一足早く抜け出した中国は、経済活動の回復から電力需要が高まっている。

 それに加えて、これまで沿岸部が中心だった経済活動の地域が内陸部まで浸透し始め、「国全体の電力需要がワンノッチあがっている」(大手商社幹部)という。

 ■中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる見通し

 特に、製造業が集積し、中国の国内総生産(GDP)の一割を占める南部・広東省では異例の電力不足に見舞われている。その理由は「少雨で水力発電がままならない」とか「石炭の価格上昇で火力発電所の発電が計画通りできない」などと説明されるが、そもそも内陸部の急速な工業化に伴って電力需要が増加している。さらに、脱炭素に向けた国際的な世論もあり、石炭からLNGへのシフトが進みつつあり、LNGの需要はかつてないほど高まっている。

 南部の国有送電会社、中国南方電網管内の1~5月の電力消費は前年同期比23.2%も増えた。全国平均より5.5ポイント高い数値だ。このため、電力当局は5月、電力不足を理由に、産業や企業ごとに供給を調整する方針を発表するなど、中国経済の成長へのボトルネックとなっている。

 内陸部への工業化の進展で不足する電力を賄うためLNGの爆買いを進める中国。調査会社ICISエッジは、今年、中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になるとの見通しを示している。

 業界では中国が世界最大のLNG輸入国になるのは2022年以降だと言われていたが、1年前倒しとなるわけだ。同社によると、20年6月から21年5月のLNG輸入量は、中国が7627万トン、日本が7632万トンとなっているが、21年の輸入量は、中国が8120万トンと、日本の7520万トンを上回る見通しだ。

 ■LNG不足で、新電力の経営破綻は今後も続く

 この「LNGの爆買い」で、日本の卸電力市場の取引価格が再び上昇基調を強めている。

 日本卸電力取引所(JEPX)で毎日取引するスポット価格(24時間平均)は、5月(1~22日)の平均が1キロワット時6.87円。20年5月の月間平均値である4.18円に比べ64%も高くなった。

 スポット価格はこの冬の寒波襲来と発電燃料の不足で1月に150円超まで急騰したが、2~3月は前年同期に近い水準に戻った。しかし、落ち着いたのもつかの間、LNG不足でスポット価格がまた上昇し始めた。

 例年なら、暖房不需要期となる5月は余ったLNGを消費する期間だが、「今年は余剰が少ない。余ったLNGを使ってつくる安値の電気の入札がかなり減っている」(JEPX)。

 電力供給が足りず電力卸価格の上昇がさらに進めば、卸市場から電力を調達する新電力の経営にも大きな打撃になる。

 この冬の電力不足で新電力最大手のFパワーが3月に会社更生法を申請、経営破綻した。負債総額は464億円と21年に入り最大の倒産となった。電力の調達不足を大手電力に肩代わりしてもらう代わりに支払う「インバランス料金」の負担が新電力各社の経営の重荷になっている。「4社のうち1社は支払い猶予を受けている」(業界関係者)といい、新電力の経営破綻は今後も続くとの見通しが強い。

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