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三菱電機の新社長に漆間氏 退任する杉山氏の「片腕」、変革の使命果たせるか

 三菱電機は28日、鉄道車両向け機器の検査不正で引責辞任の意向を表明していた杉山武史社長(64)が退任し、後任に漆間啓専務執行役(62)が昇格する同日付の人事を発表した。新体制で不正の全容を解明し、再発防止に取り組む。ただ、新体制の陣容に新鮮さはなく、漆間氏自身も社長を退いた杉山武史を支えてきた経歴を持つ。一連の問題で明らかになった品質に対する意識の低さやそれを容認する体質を改革すると強調する漆間氏にとって、多くの人々の生命を預かるインフラ企業のあるべき姿を取り戻すことが急務だ。

 「新社長の使命はまさに変革だ」

 28日夕、東京都内の本社で開いた記者会見で漆間氏はこう述べ、企業風土の抜本的な改革と信頼回復を誓った。各事業本部を横断する形で品質管理を担当する執行役を置く方針も示した。

 ただ、新体制は新味を感じられない顔ぶれだ。報道陣からは、漆間氏が引責辞任した杉山氏の「片腕」だったことや、留任する柵山正樹会長の責任を問う質問が相次いだ。

 実際、漆間氏は経営企画担当の専務執行役として、杉山氏を支えてきた。昨年3月までは、検査不正が発覚した鉄道車両向け機器を扱う社会システム事業を担当する役員でもあった。

 この点について、社長候補の選考を主導した指名委員会委員長の藪中三十二氏(元外務事務次官)は会見で、「直接、問題に関わりはなかった」と説明。指名委では当初、社外からの登用も含めて議論したが、現場に精通し、多くの従業員が信頼する人から選ぶことを優先したという。

 また、柵山会長の処遇については、外部の専門家で構成する調査委員会が9月に公表予定の調査結果を待って判断する考えだ。

 検査不正をめぐっては、架空のデータを基に、検査結果を自動作成する専用プログラムが使われていた。空調機器は約8万4600台、ブレーキやドアの開閉に使われる空気圧縮機は約1500台がJRや私鉄各社に納入されていた。一部の従業員は不正を認識しており、長年にわたり組織ぐるみで行われていた実態が明らかになっている。

 漆間氏は「まず経営幹部が今までの行動を改めなければいけない」と強調し、従業員との向き合い方やものを言いやすい職場作りに力を入れる考えだ。今年は創業100周年の節目でもあり、大胆な変革への取り組みの成否が問われている。(米沢文)

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