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福岡・みやま市の「みやまSE」が再び債務超過 自治体新電力の草分け

 自治体新電力の草分けとされる「みやまスマートエネルギー」(みやまSE、福岡県みやま市)が令和2年度決算で再び債務超過に陥った。冬の寒波で電力を調達する卸売市場の取引価格が高騰し、利益を吹き飛ばした。平成28年の電力小売り全面自由化を機に誕生した自治体新電力は75社(5月時点)あり、多くは他電力との競争激化で苦境が表面化している。電力による地方創生を掲げて各地で参入が相次ぐが、事業運営で壁に直面している。

 自治体新電力の多くのケースは、自治体所有の太陽光発電や小水力発電などの電源を利用し、公共施設などに販売して得た利益を、市民サービスの向上に還元することをうたっている。みやまSEは、福岡県南部にある人口約3万6千人のみやま市が、地域経済が先細りする中、55%(現在は95%)出資して27年に設立し、家庭向け小売りにも参入。市内の太陽光発電所などの電気を市内で消費する「エネルギーの地産地消」をコンセプトに事業を続けてきた。

 市内の家庭用電力(小規模店含む)の契約件数は3月時点で1437件と、地道な営業活動で数字を伸ばし、ようやく全世帯数の1割程度に。ところが令和2年度決算は最終損益が2億円の赤字となり、1億2千万円の債務超過となった。同社によると、昨年12月以降の寒波で電力需給が逼(ひっ)迫(ぱく)し、電力を調達する卸売市場の取引価格が急騰したことが主な要因。わずか3週間で2億円超のコストが必要となり、利益を吹き飛ばした格好だ。

 債務超過となれば、銀行からの借り入れが難しくなり、事業継続に黄信号がともる。九州電力や他の新電力が安値で攻勢をかけて売り上げも伸び悩む中、みやまSEは平成27~29年度にも債務超過に陥っており、債務超過を免れたのは30年度、令和元年度の2年間だけだ。横尾健一社長は「価格競争になると大手には勝てない。調達価格の高騰は予想外の打撃で、電力事業の怖さを感じた」と語る。同社は、事業収益で住民サービスを充実させる目標を掲げるが、十分な住民還元はできていないのが現状だ。

 経済産業省によると、自治体の出資が確認できる新電力は5月時点で全国で75社に上る。人口減少にあえぐ地方都市での設立も多く、多くの自治体が「電力による地方創生」として、収益を公共サービスに活用する姿を描く。

 ただ、多くの事業者が他電力との競争にさらされて苦戦。行政の関与が問題視されるケースもあり、奈良県生駒市では、市と市が出資する新電力との電気契約をめぐり、必要以上に高い電気代が支払われているとして住民訴訟に発展した。

 自治体新電力は国が目指す脱炭素化の主体になりえるが、電力販売は気温や社会活動などに経営が左右されるリスクがある。経産省は今年度の夏と冬も電力需給が逼迫するとの見通しを発表している。第三セクターが破綻すれば結局、住民がツケを支払うことになり、経営状況の精査とリスク管理が求められている。(一居真由子)

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