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日立、目指すはアップルの革新性 1兆円買収でDXを世界展開

 日立製作所のトップの布陣が7年ぶりに変わり、東原敏昭会長兼CEO(最高経営責任者)と小島啓二社長兼COO(最高執行責任者)の新体制が本格的に動き出した。令和3年4~6月期の本業のもうけを示す連結営業利益は前年同期比約2.2倍の1304億円と、足元の業績は堅調だ。8年3月期までに営業利益が安定的に1兆円を超えるようにするとの新たな経営目標の実現に向け、今後、一層の収益力強化の鍵を握るのが7月に買収を完了した米IT企業のグローバルロジックだ。約1兆円を投じた大型買収の成否を市場は注目している。

 欧米など顧客400社

 「グローバルロジックはおもしろい会社だ。米アップルがiPhone(アイフォーン)で、イノベーションを起こしたようなことを(企業向けビジネスで)やりたい」

 売上高約1300億円のグローバルロジックに日立が支払った買収額に対し市場関係者から“高値づかみ”との批判的な声も聞かれるが、小島社長はこう話し今後のM&A(企業の合併・買収)効果に期待を込める。

 グローバルロジックは欧米を中心に通信や金融、自動車など幅広い業種に約400社の顧客基盤を持つが、一番の魅力はITを駆使して企業の課題を解決するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する力だという。

 同社はDXの戦略立案から課題解決策の提案、ソフトウエアの開発・提供、運用保守までをカバー。世界14カ国に約2万1000人の従業員を抱え、デザインスタジオ8カ所、エンジニアリングセンター30カ所を展開し、デザイナーやエンジニアらが顧客とともに最適な製品やサービスを作り出している。

 例えば、ロイター通信が保存する大量の画像を生かすスマートフォン向けアプリの開発。ロイターが社会に伝えたいメッセージを画像を中心に表現するアプリは、優れた双方向メディアを表彰する国際コンペティション「ホライズン・インタラクティブ・アワード」などを受賞している。また米マクドナルド向けには、店頭の注文パネルを使って顧客の購入履歴を把握し、次回来店の際に個別に最適なメニューを提案する革新的なサービスを開発した。こうしたグローバルロジックのDX推進力を、小島社長は「先入観のないユーザー目線で、破壊的なイノベーションを起こしていく」と高く評価する。

 海外比率わずか3割

 日立はこれまで、生産現場のデータを活用し、効率化につなげる独自のIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」を収益の牽(けん)引(いん)役としてきた。

 ただ、ルマーダなどを手掛けるIT部門の売上高の海外比率は約3割にとどまる。全体の営業利益を3年3月期比約2倍の1兆円に引き上げる目標に向けてはルマーダのグローバル展開が欠かせず、その担い手として日立が狙いを定めたのがグローバルロジックというわけだ。

 もっともグローバルロジックには、同社と同じように先進的なITサービスと課題解決のコンサル力でDXを手掛ける米アクセンチュアや米IBMといった強力なライバルもいる。約7500億円を投じて昨年7月に傘下に収めたスイス重電大手ABBの電力システム部門の買収と比べても投資回収のハードルは高い。

 まずは海外IT事業の中核子会社の日立ヴァンタラ(米カリフォルニア州)とグローバルロジックとの連携と相乗効果の創出へ、スピード感が求められるが課題はそれにとどまらない。

 小島社長が志向するアップルのようなイノベーション力を身につけるには日立全体にグローバルロジックのビジネスモデルを浸透させていく必要もあり、同社との融合には高い質も問われる。(黄金崎元)

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