関西国際空港などを運営する関西エアポートと神戸大は、新型コロナウイルスの感染リスクを95%以上低減し、二酸化酸素(CO)2排出量を50%以上削減する空調システムの実証実験を、今年度から開始すると発表した。早ければ令和6年度の実用化を目指す。
実験は環境省の委託事業として来年度までの2年間かけて関空の第2ターミナルで実施する。
現在の空港ターミナルの空調は、夏は設定温度に対して冷えすぎ、冬は外気の流入による影響を受けやすいなど、エネルギー効率の悪さが目立っていた。さらに、新型コロナ対策のために換気が必要となったことで、効率をどう向上させるかが、課題として浮上していた。
実証実験では、神戸大の研究をもとに、紫外線と低濃度オゾンを用いて空気中や机などに付着しているウイルスの感染力を弱め、場所ごとの人の流れや温度、湿度などのデータを人工知能(AI)で分析して感染リスクを判別し、空気が効率的に循環するよう制御する。また、空港内のデジタルサイネージ(電子看板)やスマートフォンにAIによるデータを表示することで、旅客らに時間や場所ごとの感染リスクを知ってもらい、感染防止につながる行動を促す。
これにより、感染リスクを95%以上低減し、CO2排出量の50%以上削減を目指す。今年度中に設計や試運転などを進め、来年度から効果の検証などを行う。事業費は約5億5千万円。
関西エアは、運営する関空、大阪(伊丹)、神戸の3空港からのCO2排出量を、12年度までに平成28年度比40%削減し、令和32年度までに実質ゼロにする長期目標を掲げている。
同社のマチュー・ブティティ専務執行役員は記者会見で「今回の実証実験(の成果)を3空港に展開していきたい」と意欲を示した。神戸大の河端俊典副学長は「関西だけでなく世界で生かされるイノベーション(技術革新)にしたい」と語っていた。