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生保、人生100年へ相次ぎ予防支援 自治体と社会実証

 生命保険各社の間で、病気の「予防」に重きを置いた取り組みが広がりをみせている。保険商品の販売だけでなく、自治体の事業と連動した社会実証の展開や、生活習慣の改善につなげるヘルスケアサービスに乗り出す動きも表面化。「人生100年時代」を迎え、健康寿命を延ばすニーズが高まる中、さまざまなアプローチで顧客との関係を強化しようと試みている。

 口腔ケアの意識向上

 第一生命保険は6月から、歯や歯周組織などの口(こう)腔(くう)のケアに関する社会実証を浜松市と組んで始めた。浜松市に在住または勤務する100人を対象とし、口腔ケア事業などを手掛けるベンチャー企業のNOVENINE(ノーブナイン、大阪市中央区)が開発した口臭測定センサーを兼ねたスマート歯ブラシと専用のスマートフォン向けアプリを活用。口臭や、アプリを使って撮影する口腔内の写真などのデータを基に、歯磨き習慣の改善、歯周病検診の受診、予防歯科への通院といった、歯周病を防ぐための意識向上や行動変容につなげられるかを検証する。社会実証は9月まで行い、第一生命はその成果を踏まえ、健康増進や病気の予防に役立つサービスの開発を検討する。

 日本生命保険は、利用者が血糖の変動を自らチェックすることで生活習慣の改善に取り組める「血糖変動チェックプラン」を8月1日に開始。有料で、中小企業の従業員などを対象とする。首都圏や近畿地方の一部から先行的にスタートし、令和4年度中に全国展開を目指す。

 昨年7月に始めた、糖尿病予備群を対象に糖尿病の発症を予防する取り組みに続くヘルスケアサービスとなる。米医療機器大手アボット・ラボラトリーズの日本法人、アボットジャパンが手掛ける、血糖の変動データを自動測定する装着型の端末を用いて、利用者が血糖の変動をチェックし、測定結果を専用のウェブサイトに入力。糖尿病専門医によるアドバイスのコメントがウェブ上に表示される。

 保険商品の特則に

 一方、病気の予防に焦点を当てた保険商品では、太陽生命保険が6月、がんや重大な病気の予防保険を発売。契約の1年後から2年ごとに支給される「予防給付金」を特則として付加することができ、予防給付金は病気を予防するためのサービスに充てられる。病気の早期の予防や発見につながれば、保険契約者の健康や長生きをサポートできるとみる。太陽生命は、病気の予防や健康増進をサポートするスマホ向けアプリの提供も3月下旬から開始。従来の認知症予防アプリを大幅刷新した。

 また、明治安田生命保険は、死亡保障や医療保障などを組み合わせた総合保障保険「ベストスタイル」で、新たに2つの特約を6月に発売。健康診断の結果の数値悪化に伴う通院段階や病気が重い状態になる前の段階から、給付金が支払われる。

 生保各社が病気の予防に主眼を置いた取り組みを進める背景には、「人生100年時代が到来する中、生保会社の役割も時代に合わせて進化が必要」(日生)という意識がある。「リスクに備える」ための保険商品の販売にとどまらず、「リスクを抑制する」ためのヘルスケアサービスはその一例となる。第一生命は「保険の枠にとらわれることなく、顧客との関係を強化する。(顧客の)一生涯、継ぎ目なく、いろんな提案や情報提供をしていく」と話している(森田晶宏)

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