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血液でがん検査 電機大手が開発競う NEC先手 東芝、日立も早期実現へ

 電機大手が、血液を採取するだけで、がんを検知できる検査サービスに相次いで参入している。血液検査サービスは疾病発症リスクの予測も可能で、医療費の抑制につながる「早期発見」や生活習慣病を未然に防ぐ「予防医療」の切り札として期待される。高齢化の進展に伴い高い成長が見込まれる市場として有望視されており、他業種の進出も多い。電機大手は成長市場での地位獲得を急ぐ。

 電機大手で実用化に最も早くこぎ着けたのはNECだ。グループのフォーネスライフ(東京都中央区)が、先月から一般クリニックで血液を採取し、4年以内の疾病発症確率を予測する検査サービスを始めた。協業する米ソマロジックが持つタンパク質の解析技術を使い、約7000種類の血中タンパク質を測定して心筋梗塞や脳卒中の発症確率を予測する。肝臓脂肪や糖尿病などの状態も分かる。

 11月からはがん、来年度には認知症にも予測範囲を広げる。検査を受けられる医療機関も今年度中に50カ所、来年度に200カ所に増やす計画だ。

 NECが血液検査サービスを提供するのは「人生100年時代」の到来で、予防医療のニーズが高まると判断したためだ。事業を迅速に展開することが必要と考え、子会社NECソリューションイノベータからフォーネスライフを独立させた。

 フォーネスライフは令和11年までに自社のサービスを一般の健康診断に組み込まれることを目指しているが、課題は検査料金の高さだ。現在は10万円前後もする。溝辺武史マーケティング本部長は「米国で行う解析を国内対応にし、検査数も増やしてコスト低減に努めたい」と語る。

 東芝は1滴の血液から2時間以内に13種類のがんを検知できる技術の研究を進めている。がんができると血液中に増える「マイクロRNA(リボ核酸)」を調べる技術で、自社開発した遺伝子を検出する「DNAチップ」を活用。現在、99%の精度で識別できる水準に達している。対象は胃がんや大腸がんなど13種類に及ぶ。

 同社は、東京医科大学や国立がん研究センター研究所と共同研究を行ってきた。近く都内のクリニックで実証実験を始める。将来的に1回2万円程度の検査料金を想定する。検査サービスを成長事業と位置付け、早期の実用化を目指す。

 日立製作所も血液中の微量の遺伝子から、がんの予兆を見つける検査サービスの実用化を目指している。小島啓二社長兼COO(最高執行責任者)は「バイオテクノロジーを中心に革新的技術が出ている。大きな変革が起きて、成長が加速する」と大きな期待を寄せる。

 同社は、遺伝子工学で高い技術を持つ企業の買収を視野に入れており、令和3~5年度にバイオ医療分野で1500億円のM&A(企業の合併・買収)投資枠を設けた。

 H&Iグローバルリサーチ(東京都中央区)の調査によると、世界の血液検査市場は2028年までに約15兆4800億円まで拡大する見通しで、21年から年平均8.3%の成長が見込まれている。国内では味の素がアミノ酸を活用したサービスで先行する。富士フイルムホールディングスやIT大手のDeNAなども手掛けており、電機大手を含めた市場競争が激化することが予想される。(黄金崎元)

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