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アパレル各社が「ジェンダーフリー」に照準、オンワードは新ブランド 三陽も企画

 アパレル各社が、性別に関係なく着られるジェンダーフリーの商品を相次ぎ投入している。オンワードホールディングス(HD)が新ブランドを立ち上げたほか、三陽商会やワールドも品ぞろえを強化している。背景にはLGBTQ(性的少数者)への社会的理解が進んでいることや、ファッションの好みに対する性別の違いがなくなっていることがある。各社は固定観念にとらわれない商品づくりで新たな需要を取り込もうとしている。

 ゆったりした作り

 オンワードHDは4月、子会社のオンワードデジタルラボ(東京都港区)を通じてジェンダーフリーブランド「IIQUAL(イーコール)」を立ち上げた。

 首元がV字に大きくあいた丈の長い「Vネック スリーブレスワンピース」(1万5400円)や、前からはスカート、後ろからはパンツに見える「フルレングスラップ パンツ」(1万4300円)などを用意。いずれも全体的にゆったりした作りとなっている。

 ウェブサイト上で注文を受け付け、工場から自宅へ直送する販売手法を採用。20代男性が商品を「指名買い」したり、購入後に夫婦やカップルでシェアしたりすることも少なくないという。

 イーコールは、社会問題の解決を目指す事業の一環として立ち上げた。オンワードデジタルラボの高橋純取締役は「自社以外からも同様のブランドが増え、多様な商品が提案されるきっかけになれば」と話す。

 メンズを男女兼用に

 三陽商会は、セレクトショップ「LOVELESS(ラブレス)」の独自企画商品として、10月に初めて男女兼用の4商品を投入する。このうち「7色ニット」(1万7600円)は男性用をベースにデザインしつつ、やはりゆったりした作りで女性でも着られるようにした。通常は3色で展開するところ、多様な消費者を想定してピンクがかったベージュや紫を含む7色を用意した。

 昨年春ごろから女性客がメンズの商品を購入するケースが増えていたことを受けて企画した。色選びなどでLGBTQの社員の意見を取り入れたという。

 ほかにもワールドは、男女兼用デザインが基本のカジュアルブランド「BASECONTROL(ベースコントロール)」に、9月から子供服を加える。「無印良品」を展開する良品計画は、性別や年齢などに関係なく着られる「MUJI Labo(ムジラボ)」を展開。今年の春夏物で約40商品を用意した。

 LGBTQの権利保護をめぐっては、先の国会への提出は見送られたものの、性的少数者の理解増進に向けた法案成立の動きが広がりつつある。日本企業の間でも、ホンダや三菱ケミカルが新卒採用で応募する学生の性別記入を不要にするなど、LGBTQに配慮した対応が進む。

 電通傘下の研究機関は、LGBTQの国内消費市場が約5兆4200億円に上ると推測する。アパレル業界は新型コロナウイルス感染拡大による販売減などに苦しんでいるが、多様性を認める社会の実現を先導し、業界を活性化するチャンスといえそうだ。(井田通人)

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