Greenステップ

国産バイオ航空燃料に日揮・コスモなど参入続々、課題はコスト 廃食用油や藻類活用

 二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量削減が急務となる中、従来の石油由来の航空燃料の代替として、環境負荷の小さい「バイオジェット燃料」の商用化を目指す動きが相次いでいる。日揮ホールディングス(HD)とコスモ石油などは使用済み食用油(廃食用油)を原料とする国産バイオジェット燃料の商業生産を令和7年までに実現させたい考え。脱炭素の潮流を追い風に将来の市場拡大が見込まれるが、普及にはコスト低減が課題となる。

 日揮HDとコスモは、廃食用油の収集などを手掛けるレボインターナショナル(京都市伏見区)と組み、レボ社が飲食店や食品工場などから収集した廃食用油をもとにバイオジェット燃料の量産化を目指す。数十億円を投じてコスモの堺製油所(堺市西区)内に新たに製造設備を設け、7年までの操業開始を計画。生産規模は年間約3万キロリットルを目標とする。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成金も活用し、原料調達から製造、製品を輸送して空港に納入するまでの一連のサプライチェーン(供給網)の早期確立につなげる。

 一方、IHIは、光合成により高速で増殖する微細藻類を大規模に培養し、藻類が生み出す油分をもとにバイオジェット燃料を製造する技術の確立に取り組んでおり、6月に羽田空港発の全日本空輸と日本航空の国内定期便に供給した。

 また、バイオテクノロジー企業のユーグレナは、藻の一種であるミドリムシ由来の油分などを使ったバイオジェット燃料や、軽油の代替となるバイオディーゼル燃料を「サステオ」のブランド名で展開中だ。6月には、横浜市鶴見区の実証プラントで製造したバイオジェット燃料を使用した初フライトを、国土交通省保有の飛行検査機と民間航空機でそれぞれ行った。

 実証プラントの生産量は、バイオディーゼル燃料を含めた合計で年間最大125キロリットルにとどまるが、7年中の操業開始を目指す商業プラントでは年間25万キロリットル以上と2000倍を超える規模を予定。量産により1リットル当たり1万円という現行の製造コストを大幅に引き下げ、販売価格を1リットル当たり200円以下にできるという。出雲充社長は「当たり前のようにバイオ燃料を使っていただける、そういう時代を2050(令和32)年までに必ず実現する」と意気込みを示す。

 再生可能な生物資源由来のバイオジェット燃料は「持続可能な代替航空燃料(SAF=Sustainable Aviation Fuel)」と呼ばれ、石油由来のジェット燃料と比べてCO2排出量を8~9割減らせる効果が見込めるという。国際民間航空機関(ICAO)は、国際線について「2019(令和元)年比でCO2排出量を増加させない」とする制度を導入しており、ほぼ皆無だったSAFの市場は着実に拡大する見通しだ。

 SAFについては、政府も「グリーン成長戦略」で、他国に先駆けて令和12年ごろにはコストを従来のジェット燃料と同等の1リットル当たり100円台まで低減し実用化を達成するとの目標を掲げており、官民を挙げた対応の加速に期待がかかる。(森田晶宏)

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