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「フラワーロス」深刻化、コロナ禍で廃棄拍車 サブスクや販路拡大で需要狙う

 生花の廃棄「フラワーロス」を減らそうと、花卉(かき)業界の枠組みを超えた取り組みが広がっている。茎の長さが規格と異なるなどの理由で生花が廃棄されてしまう長年の問題が、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要の冷え込みで深刻化したためだ。各社はサブスクリプション(定額課金)制度の導入や販路拡大などで需要喚起を図っており、新たな流通モデルの構築が期待されている。

 生花は通常、農家が市場に出荷し、価格が形成され、花店などの小売店が買い取る。ただ、生産段階ではサイズなどが規格に合わない生花が廃棄される「規格ロス」が2~3割発生。さらに小売店で売れ残ったり、値下がりしたりすることも損失につながる。

 農林水産省によると、切り花の1世帯当たりの年間購入額は減少傾向で、昨年はピーク時の6割程度(約8千円)だった。業務用の需要も新型コロナ禍でイベントや冠婚葬祭が中止となったために激減し、流通金額は一時、例年に比べて約4割も下落した。

 こうした中、不動産情報サイト運営のライフルは定額料金で花を届けるサブスク事業を展開する。最も手ごろなライトプラン(配送料込み858円)では1回当たり3~4本を宅配。インターネットでの受注生産方式のため市場から新鮮な花を必要な分だけ届けることが可能で、9月までの1年間で「推定約2・5トンのロス解消に貢献できる」という。

 また、ホームセンターチェーンのカインズは、市場の規格より茎が短く出荷できない花を「スマートフラワー」として3月から販売している。本来廃棄となる花を商品化することで、流通上のロスや家庭ごみを削減する意図がある。

 花の需要を掘り起こそうと、従来の流通構造を問い直す業者もある。ライフル向けの花を扱う卸売業の川崎花卉園芸は、昨年4月から一部で生花を扱い始めた衣料品店「ユニクロ」にも納品する。店頭価格は1束390円で、内容量も一定だ。このほか倉庫型店舗など花店以外にも納品先を広げている。

 川崎花卉園芸の柴崎太喜一会長は「従来の花の規格は、生産者と卸売会社が決めたものにすぎない。消費者が望むものを提供できるよう構造を見直し、フラワーロスを解決したい」と話す。解決への道のりは、流通の常識を変える可能性を秘めている。

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