金融

ADB総裁に浅川氏、指定席死守 中国台頭で高まる国際機関トップの重要性

 歴代総裁を日本人が務めてきたアジア開発銀行(ADB)で現職の浅川雅嗣氏が再選を決め、“指定席”を死守した。国際規範やルールを守らない中国の台頭に伴い、各国の利害関係を調整する国際機関トップの重要性は増しており、日本は幹部ポストの確保に向け一層注力する必要がある。

 ADBはアジア太平洋地域の国際開発銀行として1966年に発足。日本は米国に並ぶ最大出資国で歴代10人の総裁を全て輩出した。

 アジア太平洋地域では、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」実現に向けアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じて影響力を強める。ADBはAIIBとインフラ開発などで協調融資を実施してきたが、発展途上国への投融資や支援プログラムなどで地域の主導権を争う関係でもある。

 中国は近年、国連の食糧農業機関(FAO)や国際電気通信連合(ITU)などのトップを占め人事面でも存在感を増してきた。国際機関トップは出身国に有利な運営をしない高い中立性が求められるものの、中国出身者は自国利益をむき出しにした言動が目立つ。

 かたや日本は今月、万国郵便連合(UPU)のトップに日本郵便常務執行役員の目時政彦氏が選出されたが、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長(当時)が2019年に死去してからしばらく国連機関でトップをとれずにいた。日本が重視する民主主義や法の支配を守るためにも、国際社会で再び存在感を示すことが求められている。(田辺裕晶)

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