モビリティー新時代

“炭鉱のカナリア”は鳴いているか 時代の変わり目に最も早く反応する「工作機械」

 最近、工作機械業界から、電気自動車(EV)や充電インフラに関する取材や依頼が多くなってきた。工作機械は時代の変わり目に対して最も早く反応する。何らかの危機が迫っていることを知らせる、いわゆる「炭鉱のカナリア」的役割を果たすといわれている。

 三菱自動車が平成21年にEV「i-MiEV」を発売した頃を思い返すと、メディアや自動車関係者からの取材は多かったが、工作機械関係者からの取材はほとんど記憶がない。当時はEV販売台数が少なく、業界としてインパクトは小さいとみたからだろうか。

 では今はどうか。令和2年のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の国内販売台数は計約3万台、全体の新車販売台数のわずか0.6%。この数字だけをみると、10年前と何ら変わらない。

 しかし、海外に目を転じると状況は異なる。国際エネルギー機関(IEA)の公表値によれば、欧州の2020年のEV・PHV販売台数は約140万台(対前年比140%)。20年は、新型コロナウイルスの影響により欧州の主要都市でロックダウン(都市封鎖)が発生し、自動車産業も大きな影響を受けたが、それでもEV・PHVは劇的に伸展した。今年上半期は既に100万台を超え、通年では200万台を超す勢いだ。

 中国のEV・PHV販売台数も、20年の約136万台に対し、今年上半期は上汽通用五菱汽車の低価格EV「宏光MINI EV」の大ヒットもあり、既に100万台を超えている。年間販売を考えると、小型EV分野には多数のメーカーが類似のEVを投入し始めており、200万台をかなり超えるのではないだろうか。

 また、米国の今年上半期のEV・PHV販売台数は昨年並みの30万台に達しており、通年は前年比で倍増となるだろう。8月にバイデン政権が30年に新車販売の半分以上を「ゼロエミッション車(PHV含む)」とする電動化目標を発表したことで、EV販売にはさらに拍車がかかると思われる。

 こうしてみると、日本の鳥かごでは何事もないようにカナリアが鳴いているが、海外ではカナリアの鳴き声が途絶え、市場が激変して危機が近づいたことを伝えている。

 日本の自動車産業は、昨年実績でみると国内向けが2割、輸出を含めた海外向けが8割のビジネスだ。市場が激変している海外向けに対応しなければ、自動車産業の将来はおぼつかない。それは国内向けビジネスも見直すことにつながるのではないだろうか。国内はまだ大丈夫との声もあるが、戦略の転換が迫られているように思えてならない。

(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)

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