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「サイトの豪華さは消費者に伝わらない」高級ブランド販売サイトが驚くほどチープな理由 (1/3ページ)

 イタリアのファッションECサイト「YOOX(ユークス)」は、ハイブランドを中心に展開しており、中には100万円クラスの商品もある。だが、サイトはチープで、高級品を扱っているようには見えない。なぜこのような仕様なのか。「Screenless Media Lab.」による連載「アフター・プラットフォーム」。第5回は「高級ブランドがサイトの作り込みをあきらめた事情」--。(第5回)

 ■100万円を超える商品もあるのに「不親切でチープ」

 海外に本店を持ち、富裕層向けにグローバルに商品展開する通販サイトがある。例えばイタリアの「YOOX(ユークス)」は、高いものでは100万円クラスの高額商品がふつうにあり、商品数も数万点を扱う世界的なハイブランド通販サイトだ。グッチ(GUCCI)やプラダ(PRADA)、ロエベ(LOEWE)といった有名ブランドが揃(そろ)い、商品数も多く、日本からオーダーしても数日で商品が届く。2000年の創業以来YOOXは成長を続けており、2017年時点で売上高は2700億円を超えている。

 他にも、エシカル&サステナブルに力を入れている「Farfetch(ファーフェッチ)」など、同様のサイトもいくつか存在しているが、いずれもサイトデザインは概して出来がいいとは感じられない。また、検索も使い勝手が悪く、使われている写真のクオリティーも高いとは言えない。

 日本人が見慣れたユニクロやゾゾタウンのような、きめ細やかに作り込まれたファッションサイトと比べると、「チープなつくりだな」という印象を受けてしまう。しかしこうしたサイトは続々と数を増やしており、もはや高額ファッションECについてデファクトとなりつつある勢いだ。

 ハイブランドの販売店ではブランドイメージを高めるために、店舗の内外装や商品のショーアップに凝り、見た目を豪華につくっている。同じ傾向はネットでも初期には見られたが、今ではそうしたマーケティングはほとんど見かけなくなった。

 ではなぜ、買い手はチープで使い勝手もいいとは言えないサイトで高額商品を購入するのだろうか。

 ■サイトで商品価値をアピールする必要がない

 伝統的なマーケティング論では、「集客し、体験させ、価値理解をさせて、購入契機を与えるというプロセスを踏まなければ、商品をユーザーに買わせることはできない」というのが通説となっている。

 同種の製品に比べて際立って価格が高い商品は、その価格で購入してもらうために、それなりの「価値付け」を必要としている。言い換えれば、商品の「価値を理解」させないかぎり、ブランド品は売れない。

 しかし上記のようなハイブランド販売サイトでは、セール等で購入契機を与えることはあっても、サイトユーザーに商品の価値を理解させるための努力は何もしていない。

 ここから推察されるのは「ハイブランド販売サイトの利用者は、自分が購入する商品の価値をあらかじめ知っている」ということだ。ブランドの価値理解が済んでいるのであれば、通販サイトはそれぞれの商品価値を訴求する必要はなく、サイトは純粋に物流機能に徹していればよいからだ。

 ■これまでの広告設計の常識は的外れだった?

 ハイブランド品販売に特化したサイトの対極には、多くの一般人が日常的に利用する、アマゾンに代表される大手通販サイトがある。

 そこではユーザーの購買行動データを分析し、それぞれの価値観に沿った商品をリコメンドすることで、反射的な購買行動を誘発するアプローチが追求されている。そのシステムは、熟考させ納得させて買わせるのではなく、「いいな」と感じたその瞬間に購入ボタンを押させることにフォーカスが置かれている。

 ハイブランド特化型サイトと大手通販サイトではターゲット層も扱う商品層も異なる。しかし共通しているのは、従来の広告戦略において最重要視されてきた「商品(もしくはブランド)の価値理解」というプロセスを、購買導線の中から省いていることにある。

 つまりハイブランド特化型サイトにおいては、「価値理解はファッションショーやメディアでの露出、インフルエンサーによる投稿等を通じて、サイト外で済まされている」という前提がある。

 大手通販サイトでも、それまでユーザーが知らなかった商品の価値を理解させる努力は放棄されている。この場合は必要な価値理解が別ルートによって果たされているわけではなく、ひたすら購入導線のショートカットに特化している。つまり「価値理解は必要ない」という姿勢だ。

 こうした通販サイトの現状が提起するのは、「購買導線の中に商品価値理解のステップを含めなければならない」という広告設計の常識が、実は的外れだったのではないか--という疑念である。

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