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鳥獣被害4億円の千葉、ジビエ消費拡大で一石二鳥なるか

 【数字から見えるちば】近年、「ジビエ」が注目されている。「ジビエ(Gibier)」は、フランス語で「狩猟で得た野生鳥獣の食肉」を意味し、ヨーロッパでは貴族の料理として発展してきた。日本では、1990年代にフランスから輸入されたが、肉食が禁忌とされていた江戸時代にも、鹿肉=もみじ、猪肉=ぼたんと隠語を用いて食されていたという。

 ジビエが注目されている背景の一つには、野生鳥獣による農作物の被害が深刻化していることがある。令和元(2019)年度の被害額は、全国で158億円とピークの平成22(2010)年度(239億円)から約3割減少したものの、依然高い水準となっている。千葉県(4億円)は全国13位で、約半分がイノシシによる被害であり、特に南房総市、君津市など県南部での被害が目立つ。農作物の被害は、農家の営農意欲低下や耕作放棄地拡大といった問題をもたらすほか、捕獲鳥獣の処理費用も地域の負担となる。そこで、捕獲鳥獣を新たな地域資源(ジビエ)として活用し、農村地域の所得向上につなげる動きが全国で広まっている。

 処理施設で加工された全国のジビエ利用量をみると、令和元年度は2008トンと平成28(2016)年度(1283トン)より約1・5倍増加(千葉県も9→14トンと同程度増加し、利用量は全国22位)。一方、捕獲されたシカ・イノシシのうち、ジビエに利用された割合は、全国で約1割にとどまる。処理施設が小規模であることや捕獲鳥獣の供給量が安定しないことから、多くが焼却・埋却処理されているのが現状である。

 こうした中、県内では処理施設の整備が加速している。昨年には、「ジビエ工房茂原」(茂原市)が開設。冷凍保管までをワンストップで行い、年間4千頭の処理を可能とする。館山市では、新たな処理施設を今年11月に開業し、「館山産ジビエ」の開発に取り組む予定。また、今年5月には、「オーガニックブリッジ」(木更津市、30年度整備)が県内で初めて国産ジビエ認証制度による認証を受けた(全国では24施設目)。国産ジビエ認証制度とは、衛生管理や流通規格を順守する施設を認証する国の制度で、安心・安全をアピールでき販路拡大が期待される。

 県では、県産ジビエを「房総ジビエ」と名付け、フェアなどを通じて消費拡大に取り組んできた。消費者の間では、ジビエ=クセが強いといったマイナスイメージを持つ人も多く、このようなイメージを払拭することも重要となる。供給・消費の両面で課題はあるが、これらの活動が実を結び、ジビエの消費がさらに拡大していくことを期待したい。(ちばぎん総研研究員 小柴早織)

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