金融

エルサルバドル「法定」仮想通貨、多難の船出 1週間経過も普及遠く

 【ワシントン=塩原永久】中米エルサルバドルが暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨に採用し、14日で1週間が経過する。国民の利便性を高めるためだとしてブケレ政権が始めた世界初の試みだったが、当初から電子財布などの金融インフラに不調が起きる多難な船出となっている。同国の「実験」は注目されたものの、価格変動が大きい仮想通貨への警戒感は国内外で依然、根深い。

 「大勢が(仮想通貨対応の)ATMを使おうとしたが、稼働しないようだ」

 先週末にかけ、各種のオンライン交流サイト(SNS)上では、ビットコインが振り込まれた政府公式の電子財布「チボ」から、専用ATMを使い資金を引き出そうとした利用者の“失敗談”が書き込まれた。

 同国政府は7日にビットコインを法定通貨に指定したが、直後から、チボがスマートフォンにダウンロードできなかったり、専用ATMが動かなかったりする不具合が報告されていた。

 ブケレ政権は国民1人当たり30ドル(約3300円)分のビットコインを配布する奨励策をとった。だが、欧米メディアによると一部の国民は、投機対象とされ価格変動が大きいビットコインから、価値が安定した米ドルに換金して引き出そうとしているもようだ。

 エルサルバドルは自国通貨コロンを放棄し、物価安定策として2001年にドルを法定通貨にした。国民の約7割が銀行口座などを保有せず、ブケレ政権は、多くの国民が金融サービスを利用できるよう、送金手数料が安いビットコインをドルに並ぶ法定通貨に指定した。米国などの出稼ぎ労働者からの送金が同国経済を支えているため、仕送りをしやすくして経済活性化につなげる狙いもある。

 ただ、世論調査で国民の8割超が法定通貨として信頼していないと回答。首都サンサルバドルで、法定通貨採用に反対するデモも発生した。周辺国の受けも良くない。メキシコ銀行(中央銀行)のディアス・デ・レオン総裁はロイター通信に、「自分の給与(価値)が日々10%も上下するような」仮想通貨を、人々は信頼できる通貨と見なさないとの認識を示すなど、普及へのハードルは高い。

 仮想通貨はマネーロンダリング(資金洗浄)や犯罪資金に流用されやすいとの懸念が根強い。米国など主要国の当局や国際機関は、「透明性の点に欠陥を抱えた」(世界銀行の報道担当者)仮想通貨を、法定通貨としたエルサルバドルの動向が、既存の金融秩序を乱しかねないと神経をとがらせている。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus