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劇団四季の吉田社長「全国巡演に福岡を組み込む」 専用劇場終了後も注力

 劇団四季の吉田智誉樹(ちよき)社長(57)が福岡市内で産経新聞の取材に応じ「キャナルシティ劇場」(同市博多区)の専用利用が終了する来年5月以降の公演活動について、全国を巡演するツアー会場に福岡を組み込み、演劇を鑑賞できる機会をつくる考えを示した。キャナルシティ劇場では現在、最後の長期公演としてミュージカル「キャッツ」が上演されている。吉田氏に、これまでの活動の成果や地方公演に対する思いを聞いた。

 キャナルシティ劇場では高い入場率をキープでき、成功したプロジェクトだった。地域のみなさんの支持もいただけていた。事業の継続が難しい状況ではなく、できれば活動を継続したかったが、劇場オーナー(福岡地所)の意思もあってかなわず、(撤退は)非常に残念に思っている。

 今後は、全国を巡演するツアーに福岡も組み入れ、公演を行うことを計画している。年に1~2回程度の巡演で、劇場が借りられる期間によって公演回数は決まる。

 福岡ではこれまで(児童を無料で招待する)「こころの劇場」にも取り組み、キャナルシティ劇場で初めてミュージカルに触れた子供は多い。劇団四季の俳優も育った。北部九州出身の俳優は非常に多く、一大勢力になっている。

 平成2年に「キャッツ」を福岡で初めて公演した際、広報を担当した。新聞やテレビ各社に出向いて周知したり、宣伝カーを走らせたりした。福岡シティ銀行(現西日本シティ銀行)頭取だった四島司氏が熱心に応援してくださり、猫の目を描いた通帳を作ってくれたり、屋台の協力を得てのれんに「CATS」のロゴを入れてもらったりもした。いろんな方の協力を得て、23万人の観客を動員できた。

 興行の成功には地域の協力が大事で、(劇団と)同じ気持ちになってくれるかが鍵を握る。福岡には演劇に理解を示す方が大勢いて行動力もあった。それが(平成8年の)劇団四季初の常設専用劇場「福岡シティ劇場」(現キャナルシティ劇場)の開設につながった。当時の劇団四季にとって夢のようなことだった。劇場がなければ、何の表現もできない。東京よりも早く福岡で作ってくださったことは、とてもうれしかった。

 人口規模で、演劇を鑑賞する人の規模は変わる。その意味で、福岡は通年で活動するには相当頑張らないといけない地域だ。資金を出して劇場をつくることは難しく、劇場をフレキシブルに貸してもらうことがかなうなら、「キャッツ」や「オペラ座の怪人」といった大型のミュージカルを持ってくることができる。公共ホールを2年に1回、3~4カ月貸してくれる地域もある。資金が必要な仕事でも(企業や行政などの)バックアップがあれば冒険に踏み切れる。

 亡くなった浅利慶太(劇団四季創設者)がこだわっていたことの一つが、文化の東京一極集中の是正だ。「芝居をやる人間は、荷物を持って全国各地に行くべきだ」とよく言っていた。

 浅利の言葉と思いは組織のDNAとして共有している。これからも全国各地での公演を大切にしていく。(一居真由子)

 【キャナルシティ劇場】平成8年に劇団四季初の常設専用劇場としてキャナルシティ博多(福岡市博多区)にオープン。22年に専用劇場の契約を終了したが、29年に専用使用を再開し、来年5月に契約が終了する。その後はコンサートや演劇、能や歌舞伎、落語など多様な演目を上演する場に転換される。

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