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飲食店、観光地…緊急事態解除で酒提供可に喜びも「街は変わった」不安

 新型コロナウイルスの感染状況が改善し19都道府県を対象にした緊急事態宣言の解除が正式に決定した9月28日、首都圏の飲食店や観光地では、客足の早期回復を望む声が続いた。一方、長引いた宣言期間を経て、テレワークの浸透など「街の様子が変わってしまった」と、かつてのにぎわいが戻るのかを懸念する経営者も。9月30日での宣言解除について、関係者の期待と不安が交錯した。

 やっと仕事できる

 東京・新橋の焼き鳥屋「山しな」の店主、山科昌彦さん(46)は「やっぱり焼き鳥には、お酒がつきもの。ようやく出せるのでうれしい」と笑顔を浮かべた。9月27、28の両日で10月の予約が3件入り、他にも問い合わせの電話が相次ぐ。ビールや日本酒などの仕入れも進めており、今後はランチ営業をやめ夜の部に専念するつもりだ。

 宣言期間中は、客から「酒を出せないのか」と問われ、断る日々だった。山科さんは「やっと自分の仕事ができる。スタートラインだ」と力を込めた。

 同じ新橋で立ち飲み屋を営む男性(60)は、街の変化に気をもむ。

 自身が新型コロナに感染したこともあり、店舗は1月から休業。店の家賃約15万円や生活費は、休業補償金と、知り合いのつてを頼った内装業のアルバイトでまかなってきた。

 都などは今回、宣言解除から約3週間をリバウンド防止措置の対象期間とし、感染対策を十分に講じている「認証店」にのみ、酒類の提供を認める。男性の店は認証を得ており、営業再開とともに酒類も提供する予定だが、「客足は正直、期待していない」という。

 コロナ禍でテレワークが進み、サラリーマンの聖地とされるこの地域も人出は減少。店の常連客は「8割くらい」が自宅勤務になった。男性は「この勤務スタイルは今後もしばらく続くだろう。仕事終わりに一杯ひっかけるといった流れで、うちに戻ってきてくれるお客さんが、どれだけいるか」。そう肩を落とす。

 観光地は冷静

 政府は9月30日で緊急事態宣言を解除した後も、旅行や出張など都道府県をまたぐ移動の際、基本的な感染防止策の徹底を求めている。

 都内有数の観光地、浅草では、宣言中は近場からの観光客がほとんどで土産品を購入する人は多くなかった。「仲見世商店街振興組合」の金子弘之理事長(67)は、宣言解除による客足の戻りには「もちろん期待している」とするが、「長らく解除と宣言を繰り返してきた。今回が最後になるか、分からない」と厳しい表情を崩さない。

 神奈川県の温泉街、箱根湯本にあるリゾート旅館「箱根藍瑠(あいる)」の支配人、渡辺健さん(36)も「宣言が解除されても劇的に変わることはないのでは」と冷静だ。同館は各部屋に露天風呂があり、食事は個室で提供するなど、感染対策を徹底。予約が埋まる日も多くなってきた。渡辺さんは「宣言中は旅館にこもって過ごすお客さまが大半だった。近くの観光施設などに足を運ぶ方が増え、箱根全体が潤えば」と期待を込めた。(永井大輔、浅上あゆみ)

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