知財ビジネス

恒大危機 中国の特許活用に冷や水

 中国恒大(こうだい)集団の経営危機に伴う中国不動産業界の混乱は、中国が現在進めている「取得」から「活用」へ向けた知財戦略の転換に影響を及ぼすのか。爆発的に拡大するであろう中国知財活用市場に着目し、中国で活動する企業は増えている。現在、日本の大手金融機関は日本企業に眠る特許や技術を中国企業へ仲介し始めている。米仏に拠点を置く知財取引プラットフォーム会社は北京や上海に進出し、自治体と連携しつつ本格参入を準備中だ。

 企業は特許や商標などの知的財産権を自社製品・サービスに使用して商品やブランドの力を高め、収益を拡大。他社の事業参入や権利侵害を防いでいる。加えて知財活用とは、知財を外部へ売却・供与、外部から導入、金融商品化や訴訟を行うことで収益獲得を図る活動を指す。知財の情報、評価、仲介、金融、事業、法律など、多くの専門家が必要になる。

 日本では既に20年前、知財活用の必要性が提唱されたが、企業の自社特許への執着や経営者、金融機関、投資家などの理解不足で進まず、今や意識面では中国企業に追い抜かれた感がある。

 中国では現在、特許出願や特許を使った事業への補助金に加え、特許の資産価値を使った融資・投資家向け証券化商品など、特許権者が金銭を得る知財金融の仕組みもある。これらを支援する知財サービス会社が数多く生まれ、国も支援してきた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)香港の松本要知的財産部長は「個人的推測だが(中国不動産業界の混乱は知財活用の今後に)何かしら影響はある」とみる。一例に急成長中のスタートアップとして米国でも注目されていた中国の知財サービス会社「WTOIP」が破産申請中である点を挙げる。「不動産と知財の理財商品は似た点があり、不動産へのリスクマネーがシュリンク(減退)する中で知財の資金の動きも厳しくなっているのでは」という。

 中国共産党は9月に発表した「知的財産強国建設概要」で、積極的で穏当な知財金融の発展を進めると柔らかな表現を使い、証券化の表現をやめるなど、初めてトーンダウンした。「低質な知財サービス会社を排除し、知財活用におけるリスクを是正しようとする姿勢は明らか」と松本氏は指摘する。

 こうした中、日本企業と中国企業の知財取引は続く。現地信用調査を行う専門家は「日本企業の認識は相変わらず甘い。特許ライセンス契約で安心し、ノウハウを契約企業の背後にいる企業に吸いとられる例が典型的だ」と警告している。(中岡浩)

 なかおか・ひろし 金融専門紙記者、金融技術の研究会を行う財団法人などを経て、知的財産に関する国内最大の専門見本市「特許・情報フェア&コンファレンス」など、主に知財に関する企業の取り組みなどの取材に従事。ジャーナリスト。高知県出身。

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