後席からのウイルスの流出をシャットアウト
さらに後席には、マイナスの陰圧を保つようべンチレーションを組み込んでいる。ラゲッジルーム側面に設置したフロアファンが車内の空気を強制排出。「HEPA」(High Efficiency Particulate Air)と呼ばれるフィルターを通して吐き出す仕組みになっている。つまり、ドライバーが座る前席から陽性患者が乗る後席には空気が流れるが、逆流はしない。むしろ陽性患者が撒いたウイルスは、フィルターで濾した後に排出されることになる。ドライバーも安心して患者を搬送できるわけだ。
後席は消毒しやすいPVCシートカバーがかけられており、床は清掃がしやすいオールウェザーマットが敷かれている。さらに前席と後席の会話が成立しやすくするために、ハンズフリーの通話システムも備わる。コロナ患者は肺を患っている可能性が高く、会話が聞き取りづらい。しかも運転席と後席は隔壁で隔てられている。そのための配慮である。
もともとマツダは、地域医療に積極的な社風で知られる。広島本社はマツダ病院に隣接しており、早くから感染予防シートの設置や、マスクやフェイスシールドを製作している。この搬送車両も開発がスタートしてから3カ月という短い期間でで初号機が完成した。医療関係者や罹患者からのヒヤリングを繰り返し、広島県と山口県の地方自治体に納入を開始。今ではマツダの特装車として全国で取り扱いを開始している。
運転した印象はごく自然なものだ。唯一の弊害は、前後との境に隔壁があるために、全席のシートスライドが制約されることぐらいであろう。搬送の緊急性を考えれば無視できるほど些細なことだ。
マツダが率先して新型コロナウイルスに対峙し、医療体制を支えてくれていることが誇らしい。