金融

インフレ長期化に警戒感 FRB幹部、「一時的」否定 利上げ前倒しの声も

 【ワシントン=塩原永久】米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部が物価上昇への警戒を強めている。ウォラー理事が19日、「高めのインフレが一時的でなくなる(物価の)上方リスクを大いに懸念している」と指摘。ボウマン理事もインフレが「これまでの予想より長く続く」恐れに言及した。「過渡的な現象だ」としてきたパウエル議長より、踏み込んだインフレ懸念の表明が相次いでいる。

 「高い物価上昇率が過渡的かどうか判断するには今後数カ月が非常に重要だ」

 ウォラー氏は19日の講演でそう述べ、FRBが目標とする上昇率2%を上回った物価の動向を引き続き注視する考えを示した。

 これまで物価の統計数値を押し上げてきた木材や中古車などに加え、最近は家賃やエネルギーの価格上昇も目立つと説明。2%を大きく上回るインフレが2022年まで続けば、「想定より早めの利上げを支持する」と話した。

 ロイター通信によると、ボウマン氏も19日、「たった数カ月前と比べても、インフレがこれまで考えていたより継続する可能性」が高まったと指摘した。

 新型コロナウイルス危機から回復した経済が活発化し、それに伴うインフレは「一時的だ」との見方をパウエル氏らは貫いてきた。やがて物価上昇は落ち着いて、目標の2%水準に近づくと繰り返してきた。だが最近は「『一時的』(という表現)は禁句だ」(アトランタ連銀のボスティック総裁)などと、軌道修正を迫る声が増えている。

 FRBは11月2~3日の金融政策会合で、量的金融緩和策の縮小を決める見通しだ。ただ、雇用情勢はコロナ禍前の水準に戻っておらず、事実上のゼロ金利を維持して景気を支え続ける必要性もある。一方、物価上昇が続けば金利を早く引き上げる「より積極的な対応」(ウォラー氏)が迫られ、市場の動揺を誘いかねない。FRBは物価動向をにらみながらの難しいかじ取りが続きそうだ。

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