しかし、現時点で開業に向けた見通しは立っていない。南アルプスの地下を貫くリニアのルートのうち、静岡県内を通過する一部区間について、同県は工事の影響で県内を流れる大井川の河川流量が減少するとの懸念から着工を認めていない。
6月の知事選で「ルート変更」や「工事中止」を訴えて再選を果たした川勝平太知事は反対姿勢を強めており、今月24日投開票の参院静岡選挙区補欠選挙についても「最大の争点は水。静岡県の水を守る人を支援していきたい」とし、知事選で自身の選対に入っていた野党系候補を支持する考えを示した。
一方、仲介役の国交省が設置した有識者会議は「科学的・工学的」な分析の結果、適切な対策がとられれば流量は維持できるなどとした中間報告を取りまとめる方針で、JR東海もその内容を踏まえて地元に理解を求めていく構えだ。
「(研究や開発をする)時間はありますので…」。今後の技術的な改善点を尋ねられた広報担当者はそう苦笑いしていたが、いつまでも世界有数の技術が日の目を見ることができないというのは何とも忍びない。(福田涼太郎)