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これが日本の技術力 ワクチン接種に生かしたスキル

 国内で新型コロナウイルスワクチン接種を2回以上を終えた人は26日、全人口の7割を超えた。当初は各地でトラブルも目立った集団接種だが、改善を重ねてスムーズに進展。その裏には、日本の製造現場で培われた知恵が一役買っていた。接種で生かされた「カイゼン」は、集団接種を担った行政にも大きな財産になっている。

 ミス防止にクボタ協力

 6月、堺市の集団接種会場では、ワクチンが充填(じゅうてん)されていない空の注射器を使うなどのミスが続いていた。対応策を模索していた市は、市内に工場を構える農業機械メーカー、クボタ(大阪市)にアドバイスを求めた。

 工場では生産性や安全性の向上に、人員配置や機械のレイアウトを変える「カイゼン」を日々重ねている。生産管理の視点から、接種会場の課題を見つけてもらうためだ。

 接種会場を視察したクボタは、その日のうちに改善点を見つける。ポイントは一目で作業の流れが分かるようにすること。注射器へワクチンを充填する作業では、作業前、作業中、作業完了と注射器の置き場所が明確に分かるように、机上にテープを貼るよう提案された。

 また、接種作業に慣れてきたことから注射を打つペースが上がり、充填作業が追い付いていないことを指摘。「ペースを早めても接種に来る人数は決まっている。充填作業の時間に余裕を持った方がいい」とのアドバイスがあった。

 これらの改善点が各会場に採用されて以降、充填作業でミスは起きていない。市の担当者は「アドバイスで改善され、余裕をもってできるようになった成果だ」と喜んだ。

 「元祖カイゼン」トヨタも活躍

 トヨタ自動車が本社を置く愛知県豊田市の集団接種会場。トヨタが会場運営に協力し、「トヨタ生産方式」と呼ばれる生産管理技術が応用された。

 同社によると、受け付けで時間がかかっていると分かれば、事前に必要書類を取り出すよう周知し、窓口も3カ所から6カ所に増設。問診の際、医師が立ち上がって書類を受け取っていたため、医師と被接種者の間にあるアクリル板に穴を開け、医師が座ったまま書類を受け取れるようにした。

 豊田市の担当者は「接種を早く進められた分、接種前の問診などに時間を確保でき、安心につながっている」と説明する。

 福岡県宗像市でも、トヨタ生産方式を採用。5月半ばに設置した集団接種会場で、隣の宮若市に本社を置くトヨタ自動車九州の協力を得たという。医師1人が2つのブースを受け持ち、交互に接種を行うなど効率化を図った。

 職場接種でも

 生産管理技術を持つ企業は、自社の職場接種でも活用している。

 パナソニック(大阪府門真市)は、大阪、東京など国内主要5拠点の社員や協力会社の従業員8万5千人を対象にした職場接種を8月中に完了し、10月中旬時点で全国十数カ所の地方拠点で接種を進めている。

 接種会場では、人の動きをカメラで撮影。工場で人の流れを把握して改善につなげてきた方法で、接種会場でも、人員配置や会場のレイアウトの変更に役立て、スムーズな運営につなげてきたという。

 ダイキン工業(大阪市)は6月下旬から、社員ら3万7千人を対象とした職場接種を国内5拠点で実施した。

 うち滋賀工場(滋賀県草津市)では、ライトを点灯させて接種ブースの空きを知らせた。組み立て作業時に部品を載せた装置を参考に、トレイをレールの上に載せる台を作り、常に医師の近くに新しい注射器があるように工夫した。

 接種で生かされた企業の知恵について、生産管理に詳しい中京大経営学部の渡辺丈洋教授は「やり方をはっきり決め、一目見て分かるようにする考え方。製造現場に限らず、さまざまな場面に応用できる」と指摘。「特に接種会場のように、人やモノをスムーズに動かすことを求められる現場では非常に効果的だ」としている。(藤谷茂樹)

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