■ディズニー作品でもステマが常態化か
執筆現在、検索サイトで「ステマ」と検索すると、関連キーワードとして「ディズニー」「フジ」「アナウンサー」などが表示される。
ディズニーとは、2019年末の「アナと雪の女王2」に関するステマ事件を指すと考えられる。ほぼ同時刻にTwitterで複数の漫画家によってレビュー漫画が投稿されたが、広告という表記がなかったため、ステマと疑われたのだ。その後漫画家らは、投稿が企業から依頼されたPR広告だった旨を説明のうえで謝罪している。
「フジ」「アナウンサー」とは、今年4月、フジテレビの女子アナたちのInstagramにおける美容室に関する投稿がステマだった疑惑を指すと見られる。当事者として名前が挙がった女子アナたち9人は後日、謝罪している。
さらにディズニーを巡っては、過去にアベンジャーズやキャプテン・マーベルでも同様に同時刻に複数の漫画レビューが投稿されていたことが明らかになるなど、ステマが常態化していたらしいこともわかっている。
■消費者がレビューを信用できるようになるには
SNSを使ったPRは、投稿する人によっては高い宣伝効果が期待できる。しかし、ステマは信頼性を逆手に取って消費者を裏切る行為だ。
このインターネット時代、ステマが疑われれば誰でも簡単に検証可能だ。アナ雪のケースのように、同じ内容を一斉に投稿すればすぐに検索で「共犯者」が見つかる。ステマをしても罰せられることこそないが、信頼性を損ない、疑いの目で見られ続けることになることを考えると、長期的に見ればマイナスでしかないだろう。
現状、SNSなどで高評価をする場合、「ステマではないです」と断り書きを書かねばならなくなっている。またYouTubeでも、インフルエンサーらが企業から依頼されて商品を紹介する動画には「プロモーションを含みます」といったテロップが入る。
それだけステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。
失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき時期がきていると言える。
高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)(PRESIDENT Online)