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Jホームタウン規定緩和は戦国時代の始まりか、全国進出目論むクラブには朗報 (1/2ページ)

 【北川信行の蹴球ノート】10月中旬、日本サッカー界に衝撃が走った。一部スポーツ紙が「Jリーグ、ホームタウン制撤廃へ」と報じたのがきっかけ。事実であれば、Jリーグが1991年の組織創設から30年間掲げてきた地域密着の理念が根底から覆ることになる。サポーターやスポンサー、クラブの本拠地がある自治体からも激しい反発が起きかねない。Jリーグ側はすぐさま村井満チェアマンが「撤廃・変更の事実は一切ない」と報道を否定。10月19日に「ホームタウンに関する規定を来季から一部緩和することでクラブ側と合意した」と発表することで、事態の沈静化を図った。とはいえ、今回の規定一部緩和自体が、Jリーグの勢力地図を塗り替える可能性があるのではないだろうか。

 優先的にリーグが公認

 まずは、各クラブの本拠地であるホームタウンについて説明する。Jリーグ規約では「クラブは理事会の承認を得て特定の市町村をホームタウンとして定めなければならない」と明記するとともに、「クラブはホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブ作り(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない」と定めている。また、一定の条件で複数の市町村や都道府県をホームタウンとすることができることや、ホームタウンは原則として変更できないことも記されている。

 一方で、ホームタウンでの各クラブの権益については「クラブは原則として、ホームタウンを含む都道府県を活動区域とする」とした上で「活動区域におけるサッカースクール、講演その他サッカーに関する諸行事の開催について、優先的にJリーグの公認を受けることができる」とうたっている。

 ホームタウンのクラブから「待った」

 次に、今回の規定の一部緩和についてみてみる。

 発端となった一部スポーツ紙が「既に議論を重ねており、早ければ10月の理事会で正式決定する」と報じた動きについて、村井チェアマンはホームタウン制撤廃報道を否定する文書の中で「クラブの営業、プロモーション、イベントなどのマーケティング活動における活動エリアに関する考え方の方向性について議論しているもの」と説明。10月19日の発表では、各クラブが地域に根差して活動する原則を堅持し、ホームスタジアムで各クラブのホーム試合の8割以上を開催する-などの規定に変更はないことが示された。

 一方で、サッカー教室やPRイベントなどの事業活動については、ホームタウン以外の場所でも開催できることが明確化された。これらのホームタウン外での活動については、これまでも明文化された制限はなかったが、ある地方クラブの元社長は「大都市でイベントを開こうと思っても、その地域をホームタウンとしているクラブから『待った』をかけられることが多かった」と打ち明ける。つまり、「ホームタウン=活動区域」とした前記のJリーグ規約でいえば「(活動区域での諸行事の開催について)優先的にJリーグの公認を受けることができる」とした部分が、ホームタウンでの独占的な権益と解釈され、他クラブの活動を排除する方向に働いた可能性はある。

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