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特許侵害で溝 日鉄とトヨタ、異例の「舌戦」

 電気自動車(EV)などのモーターに使う電磁鋼板の特許侵害をめぐる日本製鉄とトヨタ自動車の対立が膠着(こうちゃく)状態に陥りつつある。10月14日に日鉄がトヨタを提訴したと発表して以降、双方が相手の対応を問題視する主張を展開。早期の解決は期待できない状況だ。

 「申し上げたいのは、トヨタ自動車は当社にとって最も重要な顧客の一つということ。今後も良好な関係を継続していきたい」

 日鉄が2日にオンライン上で行った決算記者会見。トヨタとの係争について森高弘副社長は「決算発表なので回答は差し控えたい」としながら、そう述べた。

 日鉄にとって、大口顧客であるトヨタとの関係悪化は重大な経営リスクになりかねないが、両社の対立が解ける気配はない。

 前日の1日には、トヨタの長田准執行役員がオンラインで報道陣の取材に応じ、日鉄がトップ同士の協議を経ずにいきなり提訴したとして「残念。強い表現でいえば遺憾だ」と批判。長田氏は日鉄の情報発信姿勢にも疑問を呈した。

 長田氏の発言は、10月28日に行われた日本鉄鋼連盟の会見における橋本英二会長(日鉄社長)の発言を受けたものだ。橋本氏は提訴について「全く迷わなかった」と言い切り、「顧客だから、日本的でないから(との理由で提訴しない選択肢)はない」と自社の立場を訴えた。長田氏には鉄連の会見で橋本氏が説明したことが「あんな所でやるのかな」と奇異に映ったようだ。

 訴訟に発展した場合、当事者の企業は法廷外での発言を慎むのが一般的だ。だが今回は、互いが主張をぶつけ合う“舌戦”が展開されている点が、両社の対立の根深さをうかがわせる。

 日鉄は、特許侵害で訴えた中国の鉄鋼大手、宝山鋼鉄から「特許を侵害していないと聞いているだけでは説明にならない」(橋本氏)として、宝山の電磁鋼板を使うトヨタにも損害賠償を請求。問題の鋼板を採用するトヨタの電動車の日本での製造と販売を差し止める仮処分も申請した。

 日鉄は、トヨタが特許抵触を認めれば和解に応じる可能性も示唆したが、トヨタは譲らない構え。長田氏は「訴えられた方としては潔白を証明するしかない。それに向け最善を尽くす」と強調する。

 橋本氏は「両社とも車の生産に影響があってはいけない」と話すが、両社間の溝は深そうだ。

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