金融

みずほ社長交代 障害の温床に事なかれ主義、外為法違反も発覚

 みずほ銀行のシステム障害は、親会社みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長が辞任を迫られる事態に発展した。今年に入り8回続いたトラブルでは、佐藤康博前社長(現会長)と坂井氏の2代続いた旧日本興業銀行出身トップによる権限の一極集中と企業統治(ガバナンス)のほころびが背景に指摘される。後任トップは有事に声を上げることをためらう企業風土を刷新できるかが問われる。

 坂井氏は平成30年4月の社長就任以来、店舗の統廃合といったコスト削減に加え、年功序列的な人事制度の刷新などの改革を断行。令和3年9月中間決算の最終利益は前年同期比で78・9%増加し、相次ぐトラブルにもかかわらず業績は好調だ。

 ただ、FG社長に権限が集中したことで、行員が上層部の顔色をみて自発的に動けない“事なかれ主義”を生んだといわれる。2月28日のATM(現金自動預払機)障害ではみずほ銀の藤原弘治頭取が発生から数時間連絡を受けず、ネットニュースで事態を把握したことが関係者を驚かせた。

 また、9月30日に外国為替取引システムに不具合を起こした障害時には、外為法が定める手続きを守らず海外送金していた可能性があることも新たに判明。マネーロンダリング(資金洗浄)対策の国際組織が日本の対策の不備を指摘するなど国際的な注目が集まる中、テロの脅威が身近な欧米に比べて危機感が乏しい状況も浮き彫りになっている。

 みずほは、過去にもシステム障害など問題が発生するたびに第一勧業、富士、日本興業の旧3行出身者が水面下で激しい人事抗争を繰り返し、企業風土を批判された。「One(ワン)みずほ」を掲げ旧3行の融合に努めたが、今回の障害でも興銀出身の坂井氏側が第一勧銀出身の藤原氏に“詰め腹”を切らせる形で6月に不祥事の幕引きを図ろうとし、社内だけでなく金融庁からも不信感を招いた。

 約4千億円をかけて令和元年7月に本格稼働した新システムの「MINORI(みのり)」は、旧3行のシステム業者を一本化せず引き継いだことで複雑化し、トラブルの原因すら分からない「ブラックボックス化」した。いわば旧行意識の象徴だ。

 トップが交代しても、いつ新たなトラブルが起きるか分からないみずほの不安定な立場は変わらない。収束が見えないシステム障害に立ち向かうため、今度こそ行員が当事者意識を持てる体制づくりが問われる。(田辺裕晶)

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