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太陽光パネルの大量廃棄時代に備え、再生率95%に高める装置開発

 ほぼ全量が埋め立て廃棄されている太陽光パネルを約95%リサイクルする装置を、同パネルを製造販売する新見ソーラーカンパニー(岡山県新見市)が来夏にも製品化する。独自の熱分解技術を活用してリサイクル率を高めた。来年1月から先行受注を開始し、リサイクルを手掛ける産業廃棄物処理業者に売り込む。製品寿命が25~30年といわれるパネルの大量廃棄に備えるとともに、資源の有効利用につなげる。

 太陽光発電は、2009(平成21)年に始まった余剰電力の買い取り制度で拡大した。これを踏まえ、30年代に入ると、廃棄パネルは急増するとみられている。環境省によると、廃棄量は18年の約4400トンから40年には約80万トンに膨らむ見通し。

 しかし、現状のリサイクル技術では材料別の分解が難しく、そのため不純物を取り除く後工程が必要となる。70%程度とされるリサイクル率の引き上げも課題だった。

 同社が開発した装置は、温度を数百度に高めてパネルを熱分解し、ガラスや銅線のほか、銀やシリコンを含む太陽電池などリサイクル可能な材料を高純度で抽出する。しかも二酸化炭素(CO2)を排出しない。この熱分解処理装置で今年9月に日本で特許を取得、中国では8月に実用新案に登録された。

 ただ、一つのカゴなどに入れて処理する「バッチ式」のため、パネルを1枚ずつ熱分解しなければならず処理能力は1日当たり15~20枚にとどまる。エネルギー効率も低く、製品化には適さなかった。

 そこでこの課題を解決するため、同50枚程度連続して処理できる装置の設計を考案。完成した設計に基づく製造委託先を探していたが、今月に入って国内の産業機械メーカーが請け負うことが決まり、量産化に乗り出すことにした。40年に80万トンのパネルを1年間でリサイクルするには約1200台の熱分解処理装置が必要といい、全国の産廃業者に導入を呼び掛ける。

 来夏から供給を開始し、5~10年かけて全国47都道府県の100~130社に処理施設を設置するとともに、リサイクルの普及に向け来年度をめどに協会設立を目指す。協会は産廃業者のほか、太陽光発電事業者やガラスメーカーなど10社程度でのスタートを想定している。

 また、廃棄パネルから抽出した原材料を使って新たなパネルに再生し循環させる「Panel to Panel」プロジェクトを開始、参加するパートナー企業を30日から募集する。3~5年後の稼働を目標に、再生パネル製造工場を東日本と西日本に1カ所ずつ設ける考え。

 新見ソーラーの佐久本秀行社長は「パネルを売りっぱなしにせず、最後まで責任を持ちたい」と強調、太陽光パネルでのサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に力を込める。(松岡健夫)

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