「裏コリアタウン」激変! ベトナム人急増で乱れる治安…“民族軋轢”の実態

 
コリアタウンと「裏コリアタウン」と呼ばれる今里新地

 旧遊郭の面影も残す「裏コリアタウン」として知られる大阪市生野区の今里新地。「日本人より在日コリアンの方が多い」と言われる地区で9月上旬、ベトナム人同士によるトラブルから同国籍の男性3人が殺傷される事件が起きた。一帯ではアパート家賃の安さや利便性の良さを理由に、語学留学生を中心にしたベトナム人のコミュニティーが急速に発展、トラブルも目立ち始めていた。「皆、悪い人とは思わないが…」。周辺住民に不安感が漂う中、ベトナム人と在日コリアンとの間には“軋轢(あつれき)”も生じつつある。インターネット上では事件を機に、過激な「移民反対論」までうずまく事態になっている。(矢田幸己)。

 風俗と異国文化が同居

 近鉄大阪線の今里駅から南西へ約800メートルにある今里新地。旧遊郭街の名残で、メーン通りには表向き料亭という置き屋が軒を連ねる。別の通りへ一歩足を踏み入れると、ハングルで書かれたスナックや居酒屋の看板が目に飛び込む。

 風俗とコリアン文化が溶け込み、さながら昔懐かしい昭和の歓楽街といった趣が漂う。近鉄大阪線やJR大阪環状線の鶴橋駅近くの御幸通商店街など“表”のコリアタウンとは雰囲気がやや異なるディープな裏コリアタウンだ。

 事件は9月6日深夜、今里新地の一角で起きた。

 ベトナム国籍の男性(25)が路上で、アジア系の集団に刃物で切り付けられるなどし、搬送先の病院で間もなく死亡。路上近くのマンションでは、いずれも同国籍の19歳と25歳の男性2人が切られるなどして、重傷を負った。

 騒ぎを聞きつけた女性(79)は「(路上で)男性が倒れていた場所は、血の海だった」と話した。周辺の複数の防犯カメラには、バットのような棒を持った男らが集団で暴行したりする様子や、6人組が男性の死亡した現場へ歩いて向かう様子がとらえられていた。

 「殺すつもりはありませんでした」

 発生3日後の夜、主犯とみられる男(30)が弁護士とともに、大阪府警生野署へ出頭。10日までに男を含むベトナム籍の男女3人が殺人容疑で逮捕された。府警は防犯カメラの映像に写っていた残る人物の行方も追っている。

 殺害された男性は2~3年前に来日。知人によると、日本語学校を卒業後、神戸の専門学校へ通っていたといい、明るく優しい人柄で知られていた。

 男性の弟(20)は10日、産経新聞などの取材に「(犯人の逮捕は)少しうれしいが、まだ全員逮捕されているとは思えない。複雑な気持ちだ」と心境を明かした。

 けんか、大音量の音楽…

 今里新地では近年、ベトナム人が急増している。夜間に路上でけんかしたり、大音量で音楽を流したりするなどし、近隣の在日コリアンらとのトラブルも目立っていた。

 「マナーが悪いベトナム人が多い。夜遅くに外でわめくし、いつか事件が起きると思っていた」

 付近でスナックを営む在日韓国人の女性(48)はこう話す。女性によると、以前、深夜に路上で酒をあおり、騒いでいたベトナム人グループに注意したところ、近づきながら大声でまくし立てられたという。

 また、地区内で居酒屋を経営する韓国籍の女性(54)は「ベトナム人は後から(地区に)入ってきたのに、大きな顔をするからとても不愉快」と顔をしかめる。

 生野区内でのベトナム人の急増は、統計からも明らかになっている。

 生野区役所によると、区内の外国人登録者数は8月末現在で約2万7500人。歴史的背景や元来の土地柄などもあり、そのうち9割近くを韓国・朝鮮籍が占めるが、ベトナム人は中国人(約1700人)に次ぐ約900人。24年4月時点の約150人に比べると、3年余りで約6倍になった。

 格安家賃、利便性高く

 なぜ、全国有数のコリアタウンにベトナム人が住むようになったのか。

 最大の理由は、アパートやマンションの家賃の安さとみられる。大阪・キタやミナミの相場と比べれば、賃料は格段に安いからだ。

 今里新地でアパートを経営する女性は「空き室が目立つようになり、数年前から『外国人入居可』にした途端、満室になった。家賃の安さが口コミで広まったのでは」。

 別のアパート管理人の女性は「少々マナーが悪くても目をつむっている。勝手にルームシェアをしているベトナム人もいるが、見過ごしている」と明かす。

 また、日本の語学学校で学ぶ留学生のために、学校側がアパートを借り上げ、ベトナム人やアジア系の生徒らを住まわせるケースもあるという。語学学校関係者は「家賃が安いというのが最大の理由だが、学校や繁華街へのアクセスも良く、生徒からも人気だ」と説明する。

 ただ、周辺住民は治安の悪化を懸念している。

 地区内で長年暮らす自営業の男性(71)は「これまで日本人は日本人、韓国人は韓国人と住み分けができていた。もともと柄の良い地域ではないが、今回のような事件が起こると、イメージダウンに拍車が掛かってしまう」とこぼす。

 今回の事件に関わったベトナム人は、あくまで留学生らとみられるが、ネット上では今回の事件を機に、「移民受け入れ反対」を主張するような書き込みが目立つようになった。

 「移民政策が始まったら、こんな事件は毎日だ」「ベトナム人には偏見はないが、犯罪が増えるとなるとちょっと…」。あるブログには「治安レベルを下げるような連中を日本で住まわせること自体が許せない」という過激な一文も掲載された。

 府警幹部の一人は「実数を把握しているわけではないが、生野区にベトナム人が増えているという印象は持っている」と指摘。「生活環境や文化の違いなどから、ささいなトラブルが事件に発展する可能性もある」として警戒を強めている。