山口組6代目組長、春の墓参で「よっしゃー」 全最高幹部の集合は極めて異例

 
山口組歴代組長の墓を直系組長らと参拝する篠田建市組長(手前)=17日午前、神戸市灘区

 指定暴力団山口組(神戸市灘区)と、分裂した神戸山口組(兵庫県淡路市)の対立抗争事件が全国で相次ぐ中、山口組の篠田建市(通称・司忍)6代目組長が17日、春の彼岸に合わせ、全最高幹部とともに神戸市内で歴代組長の墓参りを行った。

 篠田組長がメディアの前に姿を見せるのは抗争認定後、初めてで、春の墓参りで篠田組長と全最高幹部が集まるのは極めて異例という。抗争の中、大規模な墓参りを行ったのは、篠田組長と組織の存在感を傘下組員らに示す「激励」とみられている。

 神戸市の高台にある霊園には朝早くから慶弔担当の直系組長らが集結。自動車の登録をめぐる事件で警察当局に逮捕、釈放されていたナンバー3の橋本弘文統括委員長とナンバー4の大原宏延本部長のほか、ナンバー5の若頭補佐6人も訪れ、最高幹部全員が顔をそろえた。

 組員が捜査員や報道関係者の人数を確認し、霊園周辺の雑木林にまで分け入って突発的な事態に備えて警戒する中、篠田組長は午前9時半ごろ、グレーのスーツ姿で到着。歴代組長の墓石に手を合わせ、「よっしゃー」と短く言葉を発した後は、対立抗争へのコメントを求めるテレビ局の質問には無言のまま霊園を後にした。

 捜査関係者によると、篠田組長は昨年8月末の分裂後、ボディーガードを増強し、秋の彼岸の墓参りに姿を見せないなど警戒を強めていた。神戸山口組の勢力拡大が目立ってきた昨年12月以降はこうした方針を転換し、歴代組長の命日の墓参りを積極的に実施してきたが、春の彼岸の墓参りで組長と最高幹部全員が顔をそろえるのは極めて異例という。

 山口組の事情に詳しい関係者も「6代目体制になって田岡一雄3代目組長の命日に組長と最高幹部が一堂に集まることはあったが、春の墓参りで顔をそろえるのはおそらく初めてではないか」と指摘。理由については「神戸山口組との抗争が激化する中、トップと組織の存在感をメディアを通して傘下組員らに示したのでないか。組織を引き締めるとともに組員を激励する狙いが読み取れる」と説明する。

 同じ日、警察庁の金高雅仁長官は記者会見で、抗争状態と認定した今月7日以降、双方が絡む事件が埼玉や大阪など6府県で9件発生したことを明らかにした。内訳は発砲が1件、火炎瓶のようなものが投げ込まれたのが2件、車両突入が3件などで、首都圏や大阪での発生が目立っている。

 暴力団関係者は「ヤクザは上の顔色やしぐさを見て行動する。今回の墓参りを見てどう判断するか。シノギ(資金獲得活動)が競合する東京のほか、双方の直系組織計20団体が本拠を置く大阪でも今後、激しいぶつかり合いが予想される」と話している。