大学発ベンチャー、現場の声は依然厳しい

生かせ!知財ビジネス

 アベノミクスや地方創生で、大学には依然熱い期待がかけられている。大学発ベンチャーなど大学の知財活用ビジネスの成功にはイノベーションエコシステム(生態系)が必要というが、現場のプレーヤーから出るのは悲鳴ばかり。以下、最近の声を拾った。

 「大学を通して出願した自分の特許権で事業化しようとしたら大学から使用料を請求された。特許は大学所有だった」(起業家)、「海外で事業化するため英文の特許供与契約書案を大学へ送ったら、日本語での契約にするか、英文の契約書案を精査する弁護士費用を出すかを求められた」(同)、「大学はつまらん守秘義務ばかり言う」(投資家)。大学に交渉の基本知識や事務能力はあるのかという不満だ。

 予算面の課題も多い。「グローバルレベルの事業化の可能性がある分野は海外専門家の視点が必要だが、費用は乏しい。学内にデューデリジェンス(資産価値評価)ができる人材もいない」(大学関係者)、「試作品ができてこそ投資家を呼び込めるが、試作費用は簡単には提供も調達もできない」(同)。

 そもそも「大学発ベンチャー」を名乗る段階から、もめる。「失敗したらどうする、と大学の許しがでない」(起業家)、「大学発を名乗らせた企業について怪文書などが出回って困った」(大学関係者)、「単なる卒業者なのに起業したら大学発をつけるよう要請された」(起業家)。名乗るための責任の所在、判断基準もないようだ。

 大学研究者の意識は昔ながらの課題だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が実現すればグレースピリオド(特許化するための新規性が失われる期限)が論文発表後、半年から1年に延びる。だが「特許出願や事業化より、論文執筆や学生への教育が重要だ」という声は依然根強い。もちろん「社会貢献のため、研究で機材開発の連携をしてくれる企業を探して契約した」(医工系研究者)という積極派の研究者が存在するのも事実だ。しかし「世界を視野に入れた知財活用の夢を持って大学に就職したが、現実は厳しいことを思い知った」(中小企業診断士)という声は、徒労感に満ちている。

 大所高所からの議論も重要だが、現場の声を踏まえての議論と課題をつぶしていく作業も重要ではないだろうか。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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 ■大学の知財活用に関係する施策・法律

    年     施策・法律

 1995 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー整備

   98 大学等技術移転促進法

   99 産業活力再生特別措置法(日本版バイ・ドール条項)

 2001 大学発ベンチャー1000社計画

   02 知的財産基本法

      第1回産学官連携推進会議

   08 研究開発力強化法

   13 日本再興戦略

   14 イノベーション創出に向けた大学等の知的財産の活用方策

   15 知的財産推進計画2015(地方知財活用促進プログラムなど)