ナイフで切り裂かれたように亀裂 上空から見た被災地

熊本地震
崩落した黒川第1発電所の施設。流れた土砂が民家に迫っていた=17日、熊本県南阿蘇村(本社ヘリから、三尾郁恵撮影)

 鬱蒼と茂っていた山林が、土砂とともに斜面にそって崩れ落ちていた。土砂は、木材の固まりと化した麓の家屋をのみ込むように覆い尽くしている。17日午前、捜索活動が続く熊本県内をヘリコプターで上空から取材した。

 阿蘇山に近い南阿蘇村では、16日未明に起きたマグニチュード7・3の地震で、多くの土砂崩れが起きた。捜索が行われている「ログ山荘火の鳥」では2人の行方が分かっていない。山荘付近では重機とならんで、200人近くがスコップで山を削る。

 「県警ヘリ、火の鳥山荘方面に向かいます」-。無線から声が聞こえる。上空では捜索隊のヘリも飛び交った。並んでいたはずのログハウスは、土の下に埋もれて見えない。

 少し離れた住宅街では、一部の家屋が土砂の山に家ごとのみ込まれていた。被災者を乗せているのか、土砂の上を捜索隊が列を作りストレッチャーを運ぶ様子が見えた。周辺に広がる芝生には、ナイフでズタズタに切り裂かれたように亀裂が入っている。3日前までは、阿蘇山麓の美しい風景を売りにしたゴルフ場だった。

 捜索隊が南阿蘇村に本格的に入るのは、この日が初めてだ。無理もない。周辺自治体と村をつなぐ阿蘇大橋は折れ、別の橋も横にずれ、崖に乗っているだけ。崖にあった駐車場は川に崩れ落ち、初心者マークの付いた軽自動車が引っかかっている。下流には、ショベルカーと高層ビル並みの岩が転がり、水かさを増した濁流に洗われていた。

 午前11時ごろ、捜索現場の奥から煙が立ち上り、赤色灯が回るのが見えた。火災だ。余震、大雨、火災…。最初の地震から息つく間もなく、新たな災害が次々に被災地を襲う。消防隊が消防車20台近くを動員し、放水にあたっていた。

 村に大きな被害を与えた16日未明の地震からは、丸1日以上が過ぎた。14日夜の地震からは、生存率が大きく下がるとされる72時間が迫る。上空から見ても、捜索隊が手を休めることなく作業にあたっていることが見て取れる。残された時間が少ないことを、捜索隊が一番、理解しているはずだ。(荒船清太)