「113番新元素」理研が米欧10カ国14機関と共同研究へ
理化学研究所が発見し命名権を獲得した原子番号113番の新元素について、理研が米欧などと共同で化学的な性質を解明する研究を今月中旬に開始することが8日、分かった。発見を競った米国の研究機関も参加し、ライバル同士が手を組んで新元素の謎に挑む形となった。
共同研究を行うのは日米のほかドイツ、英国、インドなど計10カ国の14機関。実験はドイツの重イオン研究所で19日に開始する。同研究所の実験チーム代表者らによると、日本は理研と日本原子力研究開発機構、発見競争で敗れた露米チームからは米ローレンス・リバモア研究所が参加する。
日米はドイツと研究で交流があったことが共同研究の背景にある。一方、ロシアは参加せずスイスと共同で実験を始めており、性質解明でも日本と競争する。
113番元素は原子核の崩壊過程など物理学的な性質は確認されたが、他の物質とどのように反応するかといった化学的な性質は全く分かっていない。重い新元素の性質は不明な点が多く、解明できれば元素の全体像の理解が深まると期待されている。
原子は中心部に原子核があり、その周囲を電子が回っている。化学的な性質は電子の状態で決まる。重い元素では原子核がプラスの電気を強く帯びているため電子への影響が大きく、予想外の性質が現れやすい。
実験チームによると、113番元素はこうした影響が特に大きいとされ、周期表で同じグループのアルミニウムなどとは性質が異なるとみられる。この元素が将来、社会に役立つかどうかを探る糸口が見つかる可能性もあるという。
実験ではカルシウムとアメリシウムの核融合などで113番元素を合成。金などの物質に吸着する際の温度を手掛かりに、化学的性質や電子の状態を探る。合成法は理研と比べ寿命が数秒と長く、生成効率も高い露米チームの手法を採用する。実験結果がまとまるのは数年後の見通しだ。
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■113番元素 原子核を構成する陽子が113個の元素。化学的な性質が似ている元素が並ぶ周期表の族(縦の列)は、ホウ素やアルミニウムなどと同じ13族だが、性質は分かっていない。理化学研究所は亜鉛とビスマスの核融合で合成し、昨年末に発見者と国際認定され命名権を獲得。年内にも元素名が決まる。理研の合成法での寿命は約千分の2秒と短い。
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