特許庁経済アドバイザーに後藤・東大名誉教授

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「日本経済発展のため知財やさまざまな制度をどう使うかを考えることができれば」と語る後藤晃・東大名誉教授

 特許庁の知的財産経済アドバイザーに産業経済学、産業組織論の権威で、産業構造審議会(経済産業相の諮問機関)の営業秘密の保護・活用に関する小委員会委員長などを務める後藤晃・東京大学名誉教授(70)が就任した。職務は、特許庁が作成するデータや統計・資料などの検証と経済学的視点からの助言、同庁の研究テーマや、海外特許庁の成果物・活動などで参考になる点の助言などだ。後藤教授に聞いた。

 --就任の感想を

 「経済学の中で一番大きな関心事は技術革新の経済分析だ。特許制度が技術革新にどう影響するのか、発明や特許のデータを技術活動や経済動向とどう関連づけるのかといった視点だ。(基礎データに)特許公報などを使うが、特許庁から紙でしか提供されなかった30年以上前から研究を始めた。恐らく日本人では初めてだっただろう。その後、特許庁や産構審の特許制度に関する委員会などに関わり、今回の就任は非常に感慨深い。今まで勉強してきたことを生かせればいいと思う」

 --海外の特許庁にも同様な専門家がいる

 「『チーフエコノミスト』という特許を経済分析から考えることを専門にするポストがある。多くは大学の研究者で、米国特許商標庁や欧州特許庁で活躍した方はよく知っている。国際的なチーフエコノミストの会合があり、各国特許庁の活動を紹介している。そのような場へ参加し、日本の情報を発信することも仕事の一つになろう」

 --特に特許庁へ提案したいことは

 「個人的には特許法と競争法(日本では独禁法)との関係に関心がある。米国では特許商標庁と連邦取引委員会が共同で特許と競争法である反トラスト法の関係について報告書を出している。最近、標準必須特許をはじめ(特許法と競争法にクロスする)問題が増えてきている。日本でも2つの法律に関わる行政や研究者たちが一緒に研究することがあってもいいかと思っている」

 --経済アドバイザーは長岡貞男・東京経済大学教授に続き2人目。今後一緒に活動するそうだが

 「長岡先生は特許や技術革新の経済分析の第一人者。非常に心強く、頼りになる。優秀なだけではなく人柄も優れている。ご一緒できるのが楽しみだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)