5カ国長官会合でAIなど論点

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昨年5月、中国・蘇州で開かれた、第8回五大特許庁長官会合に集まった各国特許庁・知財機関のトップ

 9回目を迎える五大特許庁長官会合が6月2日、日本をホスト国に米欧中韓と世界知的所有権機関(WIPO)のトップを迎えて、東京で開かれる。日本開催は2011年以来2回目で、5月31日は副長官会合、6月1日は長官・ユーザー団体会合を開催。特許庁は「最終的に長官会合で、グローバルドシエ完成の確認、PCT(特許協力条約)協働調査試行や東京声明の合意などを目指したい」(野仲松男国際政策課長)としている。

 グローバルドシエとは、五大特許庁の間で互いの出願・審査情報へのアクセスを可能にする仮想的共通システムだ。審査の効率化と品質向上を図るため日本主導で進めてきた。WIPOのWIPO-CASEシステムを通じて世界20カ国の特許庁審査官が現在、利用可能になっている。7月には企業など一般ユーザーも利用可能なサービスとなって完成を迎える。

 PCT協働調査は、PCTに基づく国際特許出願に必要な国際調査・国際予備審査を五大特許庁間でワークシェアする取り組み。国際的に活動する企業は五大特許庁への出願が多く、ユーザーの利便性も向上する。グローバルドシエ、PCT協働調査はともに各国特許庁の審査・調査能力が評価される機会にもなるため、日本の特許庁には査定した特許権の信頼性を高める好機となる。

 東京声明には「ユーザーとの関係強化」「高品質でグローバルに通用する審査結果の提供」が盛り込まれるが、特許庁は「発展する新技術への積極対応」を入れることを提案している。技術革新によって経済社会が変革する中、各国特許庁として知財の観点からどう対応するかが問われている。

 特許庁は「東京声明に合意できたら、早ければ10月には欧州特許庁の会合で新技術に関する事務レベルワーキンググループが立ち上がる」(鹿戸俊介多国間政策室課長補佐)という。具体的なテーマはIoT(モノのインターネット化)と人工知能(AI)などが上がっており、「国際ネットワーク上の知財に関する認識や保護」「3Dプリンターの普及で発生する知財権侵害」「AIが生み出す発明とその権利化について」など。また、特許庁が新技術を活用する観点から「審査・調査業務支援への応用可能性」も論点になるとみられる。(知財情報&戦略システム 中岡浩)