EPO長官「IoTやAI、法制度変更の必要性ない」

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「日本企業の欧州への特許出願は堅調」というバティステリEPO長官

 欧州特許庁(EPO)のブノワ・バティステリ長官が五大特許庁長官会合のため来日した。フランス産業財産権庁長官などを経て、2010年7月からEPO長官を務める欧州特許界の長老だ。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などについて聞いた。

 --EPOとは何か、日本企業との関係は

 「38カ国が加盟する巨大国際機関だ。アイスランドからトルコまでをカバーする特許出願の受理と承認を行っている。域内人口は6億5000万人に及ぶ。EPOにとって日本は米国、ドイツに次ぐ3番目の出願国で、電子、医療、輸送、電気、機械などの分野が多い。出願数トップ25社に日本企業が4社入っており、非常に重視している。日本の特許庁や弁理士会などとも良い関係を保ち、年2回は日本を訪れている」

 --日本企業の国内出願は10年前から減っている

 「少なくともEPOへの出願は堅調に推移している。確かに15年は前年比で3.1%減ったが、14年は特に出願が多かった。日本での出願が減ったのは量よりも質を追求するようになってきたからではないか。特許請求項の範囲も(日本企業の場合は狭かったが)高度に洗練されてきたのではないか。予算の問題もあるだろう」

 --日本企業は特許権を獲得しても権利行使をしない“静かなる火薬庫”ではないか、もっと知財活用をすべきではという声が欧州の専門家から聞かれるが

 「そうは感じていない。欧州で権利を獲得した日本企業は非常に活発に活動している。欧州企業と同じように、適切な権利行使をしていると思っている」

 --日本ではIoTやAIの特許が注目されている

 「新技術に関して、EPOでは従来技術と同様に扱っている。法制度を変更する必要性は全く感じていない。技術的課題はあくまで技術的に解決するべきだし、この分野も同じだ。発明された技術は特許取得をすることで守られなくてはいけない」

 --AIで発明や審査をする時代が来るのでは

 「IoTやAIは決断のための情報を提供する重要なツールだが、最終的な決断は人間がする。EPO内には新技術の専門家がいる。審査をする3人の中の1人に必ず加えており、EPOでは適切に新技術の判定ができている」(知財情報&戦略システム 中岡浩)