新日鉄住金、チタン開発に注力 インフラ長寿命化に期待 大分ドームなどにも採用
■トータルコストと環境負荷削減
新日鉄住金が、建物の寿命を延ばしたり、老朽化したインフラの経年劣化を食い止めたりする素材として、チタンの開発に力を入れている。チタンは鉄より軽いのに同等以上の強度があるうえ、腐食しにくい。価格の高さが難点だが、初期費用が高くついても腐食しなければ寿命が延び、トータルコストを抑えられる。結果として環境負荷を減らすことにもつながるため、同社は普及の可能性があると期待している。
15年経ても古びず
大分市にある多目的施設「大分銀行ドーム」。2002年のサッカーW杯で九州唯一の会場に使われたが、完成から15年がたった今も、屋根が銀色に輝き、まったく古びた感じはしない。
同ドームの屋根は、中央に楕円(だえん)形をした可動式の開口部分を備える。可動部分は太陽光を通しやすいガラス繊維の膜、それを取り巻く固定部分はチタンの板を使用している。このチタン製の板が、新日鉄住金の「耐変色チタン」だ。
変色しにくいこのチタン板を同社が開発したのは01年。最初に採用されたのが同ドームだった。その使用量は面積で3万2000平方メートル、重量で53トンに達する。
チタンは万能の素材というわけではない。短所もある。
屋根や壁といった建材でのチタンの利用は1970年代に始まった。ところが90年代に入り、過去に建設された一部のチタン屋根で、銀色から茶色に変色する現象が確認されるようになった。表面に存在する酸化皮膜が酸性雨と反応して成長し、銀色だった表面が光の干渉で茶色に見えるようになる現象のためだった。
そこで新日鉄住金は独自に、この変色メカニズムを解明。変色原因となるチタン表層の不純物を取り除く技術を確立し耐変色チタンの開発につなげた。
チタンにはコスト(値段)が高いという短所もある。確かに同じ重さの場合、鉄やステンレスより高くつく。
ただし体積当たりの価格で比べると、決して高いとはいえない。さらに耐腐食性があるため寿命は半永久的で、メンテナンスもほとんど必要としない。初期導入コストが高くなってもトータルではコストを抑えられる。こまめなメンテナンスを要し、10年、20年で塗り替えたり、ふき替えたりしないといけない他の金属製屋根より経済的ともいえる。
新日鉄住金が先日、同ドームの屋根の色を観察・調査したところ、今も色がほとんど変わっていないことを改めて確認できたという。これにより、見た目も含めた寿命の長さを立証でき、より採用されやすくなったといえる。
耐変色チタンの納入実績は600件に達する。チタン・特殊ステンレス事業部の山口博幸チタン第三室主査は「リサイクル性にも優れており、(寿命の長さを考え合わせると)環境負荷は少ない」とアピールする。
補修に利用も
新日鉄住金は新しく作られる建物だけでなく、古くなったインフラの補修にも狙いを定めている。
昨年8月、沖縄県の名護、池間、阿嘉の各漁港で、護岸改良工事に「既設鋼矢板・鋼管矢板向けチタンカバー・ペトロラタム被覆工法」が初めて採用された。
同工法は既設の鋼管杭や鋼矢板、鋼管矢板といった鋼材をペトロラタム(石油系残滓(ざんし))系防食材で覆い、その上にチタンの薄板を保護カバーとしてかぶせるものだ。
チタンは、塩害などにさらされる海洋環境下でも腐食や強度低下の恐れがほぼない。金属製のため、外部の力で破損することもまれだ。このため50年以上の耐久性を発揮できるという。
新日鉄住金では1985年の販売開始以来、2万5000平方メートル、78トン以上の納入実績をもつ。長寿命化による公共支出の抑制やインフラの老朽化対策と、環境負荷低減のどちらのニーズも満たすチタンが使われる場面は今後も増えそうだ。(井田通人)
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