夢中になりすぎ、あわや自転車と衝突…猛反省

玉ちゃんのポケモンGO!(3完)
スマートフォン向けアプリ「ポケモンGO」をプレイする利用者=22日午後、東京・秋葉原(古厩正樹撮影)

 任天堂などが開発したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」が22日午前、国内でも配信された。さっそく記者もプレーしてみた。

 JR山手線に乗り、上野駅で下車した。上野公園側の改札を出ると、公園の敷地は目の前だ。奥の方には、木々の緑が見える。

 ポケモンGOを起動して、“狩り”に向かった。途中、目に入ったのは、今月17日に世界文化遺産に登録されたばかりの「国立西洋美術館」だ。20世紀を代表するフランスの建築家、ル・コルビュジエの作品で、四角いモダンなおしゃれな建物だ。

 「もしかして、珍しいポケモンがいるんじゃないか…」。自分の直感を信じて、美術館に近づいていくと、野外に展示されているフランスの彫刻家、エミール=アントワーヌ・ブールデルの彫刻「弓をひくヘラクレス」が、ゲームに使う道具が得られる「ポケストップ」に登録されていた。ここでも、捕獲アイテム「モンスターボール」を4つゲット。

 だが、お目当ての珍しい種類どころか、1体のポケモンも現れなかった。「ちぇっ」と、自分の勘の悪さにがっかりしてしまった。

 強そうな「ブーバー」ゲット あだ名を付ける

 気持ちを切り替え、林へと向かった。ネズミ型のコラッタとか、ヘビ型のアーボとか…。「なんだか、地味なポケモンばかりだな」。自分の能力を棚に上げ、そんなふうに感じていると、炎をまとった怪獣のようなポケモンが現れた。「ブーバー」だ。「強そうだな」と気分も高まり、さっそくボールを投げつける。やっぱりうまく当たらない。5回目でようやくゲット。周囲からみたら異様だろう。「なかなか、上手にならないな…」とつぶやいてしまった。

 こいつを育てよう。捕獲したポケモンにニックネームを付けられる仕組みになっているので、命名した。「玉ブーバー」。われながらいい名前だ。愛着がわいてきた。

 さらに、ポケモンを捕獲した際などに入手できる「ほしのすな」というアイテムを使えば、「CP」という強さを示す数値を上げることができる。当初は、CPが「90」ほどだった玉ブーバーを「280」まで成長させた。

 その後、「おこう」という煙を使って一定時間、ポケモンを近くに招き寄せるアイテムを使うなどして、2つの頭を持つダチョウのような「ドードー」や、卵形の「タマタマ」も捕獲した。タマタマという名には親しみを感じざるを得ない。

 午後3時半。明日の朝刊への原稿も書かなければならない。そろそろ会社へ戻らなければいけないと、千駄木方面へ。おしゃれな商店や民家が軒を連ねる閑静な住宅街を、スマホの画面を見ながら歩いた。

 交差点にさしかかったところで、ポケモン発見、引き寄せられてボールを投げる。そのとき、「キーッ」という急ブレーキの音。危うく出合い頭に自転車と衝突しそうになった。「すみません」。気を付けていたつもりだが、ついつい夢中になってしまった自分に驚いた。「歩きスマホ」は危険だ。自覚していながら、こんなことに。子供だったらもっとのめり込んでいてもおかしくない。政府が異例の注意喚起をするのも当然だ。

 猛反省して、ゲームをやめ、地下鉄の駅へと急いだ。

 初めての対戦! その結果は…

 東京・大手町にある本社に帰社すると、会社前の広場近くに「ジム」と呼ばれる拠点ができていた。プレーヤーの強さが「レベル5」以上ならば、他のプレーヤーと対戦することができる拠点だ。

 記者もちょうどレベル5になったばかり。さっそく対戦しようと、先輩の女性記者を呼びだした。「対戦してみましょうよ!」

 ところが、ジムに入ってみても、先輩記者とは対戦できない。特定の相手と対戦することはできない仕組みなのだった。対戦とは、そのジムの「主」として君臨しているプレーヤーを倒し、主の地位を勝ち取ること。いわば、「道場破り」だ。

 とはいえ、自分のポケモンの強さも確かめたく、本社前のジムの主に挑戦してみた。

 対戦は自分が所有する複数のポケモンを登録して“団体戦”のような形で行われる。対戦が始まると、相手のポケモンと自分のポケモンが対峙し、指で画面を押して攻撃を加える。画面上方にはCPのメーターが現れ、それがゼロになると、それぞれのポケモンは倒されたということだ。

 結果は惨敗。対戦開始わずか1分ほどで負けてしまった。

 「まだまだ修行が足りないな…」。そう落ち込む記者。先輩が慰めてくれた。「週末を使って強くなればいいよ、ね」

 記者は大きくうなずいた。ポケモンGOは始まったばかりだ。一目置かれるプレーヤーになれる日を夢見てがんばろうと、静かな炎を燃やしたのだった。(玉崎栄次)