リオ五輪開幕へ 東京が学ぶもの
スポーツbiz新しい東京都知事に小池百合子氏が就任した。史上初の女性都知事、都議会との対決が話題だが、2代続いたスキャンダルによる任期途中退任で傷ついた都政のイメージを刷新、信頼回復に努めなければならない。
喫緊に取り組むべき課題は山積する。オリンピック・パラリンピックへの対応もその一つ。小池氏は「関連予算や運営への決定過程を明らかにしてもらい、徹底的な情報公開を図る」と言う。政府や組織委員会との負担の分担、責任の範囲も明確にしていく必要がある。
2020年の開幕まで、4年を切った。時間は限られる。
◆最悪の経済危機
本来なら東京の“学びの場”となるはずのリオデジャネイロ五輪は、ついに大きな混乱を抱えたまま、今週末、開幕する。ルセフ大統領は国家会計の不正操作で弾劾され180日間の職務停止中、開会宣言はテメル大統領代行が行う。
インフラ整備は遅れ、ようやく延伸工事が終了した地下鉄や高速道路システムは、ぶっつけ本番。蚊が媒介する「ジカ熱」や「デング熱」の流行は過ぎたものの、駆除対策は進まず、予断を許さない。トライアスロンやセーリングなどを行うグアナバラ湾はいまだ深刻な汚染状況にある。市内の下水が直接流れ込むが、対応は遅れに遅れた。
そして、治安の悪化。政府が29億レアル(約911億円)の緊急支援を行い、12年ロンドン大会の約2倍、8万5000人の警備体制を敷く。しかし、給料の遅配から警察官らのモチベーションが下がり、犯罪組織の摘発は進んでいない。
ロシアの国ぐるみのドーピングの影響はともかく、これらは全てブラジル経済の悪化に起因する。09年の招致成功の翌年は、7.5%もの高い経済成長率を誇っていたが、昨年はマイナス3.8%、今年度も同様に低い。ここ100年で最悪の経済危機といわれている。
国際オリンピック委員会(IOC)は7年前、ブラジルに夢をみた。高度経済成長が続いて市場は活性化、南米に初めて灯(とも)る聖火は五輪運動の未来にも輝かしい足跡を残すと…。
ブラジルもまた、夢をみていた。同国スポーツ省は当時、大会開催が300億ドル以上の経済波及効果をもたらすと豪語していた。しかし、頼りにする中国経済の急激な景気減速と資源価格の急落によって経済基盤が破綻、開催による景気上昇も夢物語となりつつある。
◆問われる知恵
それでも大会は開く。陽気なサンバの国らしく、きっと楽しくやってのけるのだろう。
74億レアルの運営費を削減、スポンサー協賛金やチケット販売による収入を増やしたいが、難しさが伝わってくる。会場整備費を含めた開催費用は390億レアル。テロ対策次第では費用はさらに膨らむ。開催による政府財政圧迫は、未来に暗い影を落としかねない。
もはや、「オリンピック開催はもうかる」といわれた時代は終わった。開催で何をレガシーとして創出できるか、知恵が問われる状況となってきた。
ロンドンの開催経費総額は約4兆円とされる。一方で、政府と地方自治体、経済界が一体となった海外対応で外国からの投資は拡大。英国文化メディア・スポーツ省は17年までの経済効果を7兆円と見込む。
東京は成功例としてのロンドンの状況を分析、施策に生かす道を探っている。それはいい。約1兆8000億円、いや2兆円、3兆円とも目される開催経費をいかに経済効果につなげていくか、考えることは重要だ。
ただ、リオからも学ぶものは多い。経済の悪化に苦しみながら運営する姿、経費削減、費用圧縮につながる試行錯誤を事例として拾い集める必要を思う。
リオの組織委員会は情報公開が進み、透明性が担保され、政府と州、市、組織委員会の役割分担も東京に勝るという。費用負担の拡大が予想される中、都政をあずかる新知事にはオリ・パラ旗だけではなく、開催都市としてのありようも持ち帰ってほしい。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)
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