進む食の欧米化 安全安心重視で新たな商機を

論風

 □ナチュラルアートCEO・鈴木誠

 食の欧米化が進んでいる。それは一見、現代日本の繁栄を象徴しているかのように見える。しかし、実際にはその結果、日本人の健康は危険水域に入っている。日本では、胃がん、大腸がん、乳がんや脳梗塞などの脳疾患、心筋梗塞など心疾患の患者が増加。糖尿病患者も予備軍を入れて2000万人以上、痛風も500万人といわれる。

 また、めまぐるしい現代社会の中で鬱病などの精神疾患も急増中。病には先天的なものと後天的なもの、肉体的なものと精神的なものがある。いずれにしても、それらは食の欧米化によって、より深刻な状況を迎えている。

 バランスの良い、本来の日本の食は肉体面、精神面いずれにおいても、健康を維持、回復してくれる大きな力がある。まずは肉の食べ過ぎ注意。それに伴い、トランス脂肪酸など危険物質を含む油の取りすぎも注意。揚げ物、スナック菓子、ファストフードや安すぎる弁当・総菜類も、危険な油まみれのケースが多い。スイーツブームやペットボトル症候群など、糖の取りすぎも非常に危険だ。そこで、今度はその反作用でダイエットのためにと、極端な糖質制限が叫ばれ、炭水化物は一切食べてはいけないとなれば食のバランスが崩壊する。食品添加物の取りすぎもとどまるところを知らない。外食、中食、加工食品では無添加物を探すのは大変。化学合成添加物の過剰摂取はもちろん心配だが、天然由来の添加物も必ずしも安心とはいえない。

 ◆GM食品が浸透

 例えば、甘味料のトレハロースやコーンスターチは、いずれもトウモロコシを主原料とする天然由来の甘味料だが、それらの原料であるトウモロコシは、一般的に米国産やブラジル産の遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ。日本ではGM作物は原則栽培禁止だが、実際には多くの日本人がGM作物を食しているのが現実だ。

 百歩譲って、上記を全て現実の生活でやむなしとして受け止めたとしても、厚生労働省が警鐘を鳴らすように、1日当たり毎日350グラムずつ野菜を食べていれば、まだ多少は救われるのだが、実際には目標を大きく下回り、男性で280グラム、女性で260グラム程度にとどまっているのが実情。日本の食は野菜中心であったはずなのに。

 野菜は、ビタミンやファイトケミカルなどさまざまな栄養補給機能(身体の健康)はもちろんだが、食物繊維やカリウムなど体内の老廃物や不要なものを排出する代謝機能もあり、また亜鉛など精神安定効果(心の健康)もあるのだから、スーパーフードだ。

 旬に応じた、季節感のある食を重視することも、情緒面はもちろん、科学的機能面でも不可欠。重要なのはバランスであって、肉も炭水化物も、それぞれが決して批判の対象ではない。

 ◆食育の向上急務

 しかし、それらに偏って、過度に摂取していることは大問題だ。だからといって、メディアからあふれ出る健康情報に一喜一憂し、極端な食生活をすることは、お勧めできない。食の欧米化は、日本人の健康悪化と、農村の衰退も招いた。われわれ日本人には、日本の食生活を見直すためのタイムリミットが迫っている。このままでは間もなく地方や農村が崩壊し、手遅れになってしまうからだ。日本の食の見直しは心と身体の健康、農業という産業、地方経済、食文化、あらゆる面から日本に大きく貢献する。肉、油、糖、添加物を減らし、野菜を増やすことだ。

 家庭の食のあり方や、学校における食育レベルの向上は急務だ。政府や文科省は、国民に真の食のあり方を伝えなければいけない。政府は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)により危惧される、食の安全安心の崩壊を、絶対に防がなければならない。食品業界は、利益至上主義からの脱却で真の安全安心重視の商品開発にかじを切るべきだ。そこには、国民の幸せと、新たな商機、世界への貢献がある。

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【プロフィル】鈴木誠

 すずき・まこと 慶大商卒、1988年東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。ベンチャー投融資担当などを経て98年退社、2001年日本ブランド農業事業協同組合事務局長、03年3月ナチュラルアート設立。農業経営・地域経済活性化・店舗運営・食育プロデューサー。大正大学客員教授。八戸学院大学客員教授。50歳。青森県出身。