知る人ぞ知る「マンホールカード」 ヤフオクで2万円超の高値付くレアものも
ちょっとユニークな手のひらサイズのカードが話題になっている。その名は、マンホールカード。実際に各自治体で使われている下水道のマンホールのふたのデザインが描かれている。
今年4月からすでに74種類、23万枚が発行されているというが発行枚数もまちまちで、レア度によってはネットオークションで高値で取引されることも。一体どんなカードなのか。
カードは、縦約9センチ、幅約6・5センチ。表には各地のマンホールのふたの写真と設置場所の緯度・経度が記載され、裏面にはデザインの由来が紹介されている。
例えば、平成31年のラグビーワールドカップの試合会場である大阪府東大阪市のカードでは、ラガー3人が勇壮に駆ける姿が描かれている。マンホールといえば無機質な鉄板というイメージしか浮かばないが、もしこんなマンホールを見かけたなら必ず足を止めてしまいそう。実際に東大阪市内には3カ所で使用されているという。
「『下水道の役割を国民の皆さんに知ってもらおう』というのが、このカードが生まれた理由なんです」と「下水道広報プラットホーム」(事務局=東京都千代田区、GKP)でカードの企画・運営を担当する山田秀人さん(41)は説明する。
下水道は欠かせないライフラインのひとつ。にもかかわらず「汚い」などの悪い言葉がつきまとう。そんなイメージの払拭のために平成24年、下水道を所管する国土交通省や民間企業などでつくる任意団体のGKPが設立された。
道路上で使用されている日本各地のマンホールのふたのデザインは約1万2千種類にのぼる。山田さんは「日本が世界に誇ることのできる『路上の文化物』で、まさにアート作品」と力説する。
そうした魅力を詰め込んで今年4月に登場したカード。第1弾は「日本を代表するデザイン」をコンセプトに富士山をメインにすえた静岡県富士市、桃太郎と3匹のお供たちが登場する岡山市など30種類、10万枚が発行された。
その後、8月には第2弾として44種類が登場。このときは「うちもやりたい」と手を挙げた自治体が参加した。
姫路市のカードには、世界文化遺産で国宝の姫路城が描かれ、奈良県大和郡山市では全国有数の金魚の養殖地にちなみ、金魚鉢の中を泳ぐ金魚が図柄になっている。中でも大阪狭山市の今年築造1400年を迎えた日本最古のダム式ため池「狭山池」をデザインしたカードには、東京都、千葉県など遠方から足を運んだ人もいたという。同市下水道グループの吉田耕太郎課長は「節目の年に合わせた試みでしたが、市のPRにもなるし、やってよかった」と笑顔をみせる。
いずれのカードも制作はGKPと各自治体が協力して手がけており、下水道局や観光案内所などで配布される。2千枚から2万枚のカードを準備しているという。
こうした多種多様の図柄を集めていくのも面白いが、楽しみ方はほかにもある。北海道は緑、近畿はオレンジなど国内を9ブロックに色分けしており、好きな地域のカードを集めることも可能。また「ピクトグラム」という絵文字も記されており、鳥や木など好きな絵柄のカードだけを集めることもできる。
ヤフオクなどのインターネットオークションで高値がつくケースも。今年2月、横浜市で開かれた全国自治体の下水道職員らが集まる駅伝大会でマンホールカードのPRのためサンプル約500枚が配られた。絵柄は力走する駅伝選手たち。一般では入手不可能なレアものということもあり、2万5千円以上の値段がついたという。
じわじわと人気が広まりつつあるマンホールカード。12月には第3弾も発行予定とか。山田さんは「マンホールカードで下水道のイメージアップと日本文化の魅力を発信したい。カードをもっともっと広めていきたいですね」と意気込む。(藤崎真生)
関連記事