コア価値戦略が鍵

生かせ!知財ビジネス
「第4次産業革命も事業拡大の好機と前向きに捉えるべきだ」と話すナブテスコの菊地修知的財産部長

 ■ナブテスコ・菊地修知的財産部長に聞く

 第4次産業革命への対応が課題となる中、企業の知財部門のあり方が問われている。航空・鉄道向け動作制御機器・システムなどの開発で世界的に知られる、ナブテスコの菊地修知的財産部長に聞いた。

 --自社に有利な事業エコシステムを形成した上で、そこに参加する企業に対して契約によって特許権の無力化や制限を行うグローバル企業が出現し、先端技術を保有している企業がもうけられないケースが出ている。第4次産業革命への不安は増大するばかりだ

 「大量生産を目指した第2次産業革命では人づくり、モノづくりが重要だった。第3次ではコンピューターを中心としたオートメーション化が進行。第4次はその進化版として産業ネットワークが製造業を変えようとしている。ポイントはグローバル化と共通プラットフォーム、知恵だ。各国企業が共存する産業社会が形成されると、属地主義的な特許制度は効力を失う可能性はある」

 --共通プラットフォーム参加には知財が必要では

 「共通プラットフォームに参加するなら、世界中のどこで販売されても自信を持って知財保証ができ、摸倣が出たらすぐ権利行使ができないといけない。だがその前に、どのプラットフォームに参加するか、独自に形成するか、どこと組むかなどを判断するため、顧客に満足や価値を提供し、自社に競争優位をもたらす技術やノウハウ、つまり“コア価値”は何かを認識する作業と、それらを活用する知恵が必要になる」

 --具体的にどうすべきか

 「知財戦略は特許出願のためではなく、事業の創造、保護、活用のためにあると認識すべきだ。当社では企業の継続的成長と事業競争力強化のためにあるとしている」

 --しかし知財部門は、特許出願部門とみられがちだ

 「当社は2014年に抜本的組織改革を実施した。全役員、カンパニー社長らが参加する知財戦略審議の場を創設し、既存のコア価値、新事業で必要となるコア価値の洗い出し、それらの強化、調達のための議論をして知財戦略を構築した。具体化するため各本部の企画担当部長や各カンパニーの計画担当部長らからなる全社横断的な知財強化委員会を設け、知財戦略と知財活動工程を策定した。経営も知財部門も今こそ発想を転換すべきだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)