渡部俊也・東京大学教授に聞く(下)
生かせ!知財ビジネス■新たなエキスパティーズ必要
第4次産業革命へ向け知財部門は対応できるか。そこに将来必要となる人材について、渡部俊也・東京大学政策ビジョン研究センター教授に聞いた。
--前回まで第4次産業革命の時代には、ビジネスモデル構築やデータなどにも知財を扱う際の感覚が必要なことを聞いた。では知財部門の行方はどうなるのか
「先頃、企業の知財部門担当者を集めたセミナーで、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の時代にはビジネスがデータ主導型となるが、データについては知財部門が担当すべきだと言うと、反応は非常にまだらで、そんなこと言われても、という感じはあった。人材トレーニングなど知財部門に準備ができているのかというと、まだ途上にある」
--もし知財部門が無理だと言ったら
「少なくとも誰かがやらないといけない。経営戦略の3階層である機能戦略、事業戦略、全社戦略まで関与できる、知財法務のようなエキスパティーズ(専門知識)が必要になるだろう。そこでは特許法が得意と言っても何も役に立たない。著作権、不正競争防止法、民法の不法行為の知識は欠かせないし、特許に加えまさに主戦場となりつつあるデータや、社外とのアライアンスでもたらされる関係資産など、さまざまなリソースを次のビジネスモデルへ当てはめ、組み立てる能力が必要になる」
--なかなか、そういう人材はいないのでは
「そうだ。このため東京大学では2015年度から戦略タスクフォースリーダー養成プログラムを開講して企業から受講生を募っている。これは知財部門に特化したものではなく、経営企画や事業部門の人材が多く参加している。17年度はIoT、ビッグデータ、AIの事業戦略モデル構築をテーマにすることを考えている」
--他の部門の人材にも知財的な感覚、知財法務的な知識を注入することになる
「これまで日本は製造業が強く、そのメリットであるモノづくりのデータはうまく活用しなければいけない。ただしノウハウなどを社内で活用するだけにとどまらず、中途半端な形で誰かに渡すようなことになると、すべてを持っていかれる。第4次産業革命とはまさに革命、対応を間違った企業はなくなってしまうということだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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