中内東大教授、人の細胞持つヒツジの胎児をiPS細胞使い米で作製

 

 体のあらゆる細胞になる人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、ヒツジの受精卵に入れて育て、人の細胞を持つヒツジの胎児を作ったと、東京大の中内啓光教授が明らかにした。

 iPS細胞を使い、ヒツジに人の細胞を持たせたのは初めて。中内氏は「さまざまな動物で、人の臓器を作れるかを調べる研究の一つ。将来は動物の体内で人の臓器を作り、移植に利用できるようにしたい」と話している。

 日本では人の細胞が混入した動物の受精卵を着床させることは禁じられているため、中内氏が教授を兼務する米スタンフォード大で実験した。

 両大のチームは、ヒツジの受精卵に人のiPS細胞を注入し、ヒツジの子宮に移植した。受精卵が細胞分裂を繰り返し成長するのに伴い、人のiPS細胞もさまざまな細胞に分化する。

 チームは3週目の胎児を取り出し、人の細胞がどの部分にどれくらい含まれているかを調べている。

 移植用の臓器作製ではブタの利用が有力視され、海外で人の細胞を持ったブタ胎児が作製されている。ヒツジは、ブタよりも人の細胞を持った胎児を作りやすい可能性があり、臓器の大きさも人と同程度で有望と考えられるという。

 中内氏らのチームは1月、マウスの膵臓を持つラットを作ったと発表。この膵臓を糖尿病のマウスに移植し、治療できることを示していた。