トランプ政権、次期USPTO長官は誰か
生かせ!知財ビジネストランプ政権が発足して2カ月が過ぎた。日本の特許庁長官にあたる次の米国特許商標庁(USPTO)長官は誰になるのか。1日、商務長官として銀行家で知日家といわれるウィルバー・ロス氏が着任した。USPTO長官候補指名の日も近づいてきた。
USPTO長官は商務長官と同じく大統領が政策に沿う人物を指名し、上院の公聴会を経て承認される要職である。第1期オバマ政権では2009年6月、デビッド・カッポス米IBM元副社長が就任。2期目は前半の2年間決まらなかったが、15年3月に初の女性長官として米Googleで特許戦略を担当したミッシェル・リー・元副法務顧問が副長官兼長官代行から昇格。現在も暫定的にその職にある。ともに大手IT企業出身だ。
都内のある米法律事務所弁護士は「昨年の知財訴訟は2割以上も激減し、賠償額も小型化した。そこには特許権の価値を主張するプロパテント政策に対抗し、オープンソースなどを掲げてアンチパテント政策を主張するIT業界などの声があった。金目当ての訴訟を起こすパテントトロールは後退しつつある」と指摘する一方で「化合物特許と製品化が密接なライフサイエンス業界などでは特許権への制限に警鐘を鳴らす声もある」と話す。
そのライフサイエンス業界は、知財面ではトランプ政権を支援しているとされる。「現在、USPTO長官候補として注目されているのは米ヘルスケア業界の大手、ジョンソン&ジョンソンで法務知財部門トップを務めた実務家、フィリップ・ジョンソン元上級副社長だ」とみるのは都内の国際知財コンサルタント。再びプロパテント政策へと舵を切るかもしれないという。
米知財界の重鎮、ランダル・レーダー氏もUSPTO長官へ意欲を燃やしているようだ。日本の知財高裁にあたる米連邦巡回控訴裁判所の元判事として、特許侵害の損害賠償に関する数多くの判例を積み上げた。「ロースクールを卒業してレーダー氏のクラーク(助手)を経験すれば有名法律事務所の採用は確約されるほどの大物。アジア人トレーニー(研修生)の受け入れにも前向きで日本の知財業界にも人脈が多い。ややショーマン的な一面もある」と米知財法律事務所の弁護士は解説する。政権のごたごたで長官が決まらないことはないだろうが、さて、どうなるか。(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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