動き出した弁理士会(上)経営センターを新設
生かせ!知財ビジネス日本弁理士会(東京都千代田区)は20日、「知的財産経営センター」の運用を開始する。知的財産経営の視点から弁理士会の既存組織の機能と役割を統合、調整して、企業向けの知財経営支援、弁理士への経営支援教育、弁理士が担うべき新しい業務の研究-などをワンストップで可能にする総合センターを目指している。
知財経営とは、企業経営に知財戦略を織り込んだ高度な経営活動のことだ。弁理士には、企業の事業活動を守るための特許出願を受け持つという過去の狭い業務感覚から脱皮して、企業経営を理解した上で企業の諸活動へより踏み込んだサービスが求められている。このため弁理士会では、企業向けコンサルティング手法の研究や、企業が保有する知財の客観的価値・事業貢献度の評価手法などを開発してきた。だが今後、知財経営を弁理士の収益業務として確立していくためには、戦略的活動を実践する中核的組織が必要となっていた。
新センターは新年度最初の執行役員会で承認され、現在は内部組織調整の最終段階にある。センター長には弁理士会副会長や知的財産支援センター、知財キャラバン隊などで豊富な活動経験を持つ、松浦国際特許事務所の松浦喜多男弁理士が就任する予定だ。
組織はセンター長の下に統合事業本部、知財価値評価事業本部、知財経営コンサル事業本部、知的資産活用事業本部、知財キャラバン事業本部を置く5本部制。弁理士会の付属機関である、知的財産価値評価推進センターが吸収されるほか、知財経営コンサルティング委員会、知財活用推進委員会、知的財産支援センターが担当してきた知財キャラバン事業や知財活用表彰事業などの既存組織や事業が包含される。各事業本部のトップには全国のベテラン弁理士から統括副センター長として5人を配置。センター長以下、総勢173人の大陣容となる。
設立関係者の一人は「今、産業界に導入されつつあるIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)は、個々の企業が保有する知財や知的資産は何か、そして企業における知財経営の重要性を従来以上に高めつつある。弁理士も支援できる分野を充実させて、企業の新たな動きに積極的に貢献していかなければならない」とし、新センターでの活動に意欲を見せている。(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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■日本弁理士会知的財産経営センターの事業本部概要
【事業本部名/業務概要(統括担当、所属人数)】
統合/全体の統括、調整、知財活用表彰事業など(岸本達人弁理士、7人)
知財価値評価/弁理士による価値評価業務の支援、情報収集など(西村公芳弁理士、64人)
知財経営コンサル/コンサルティングの手法研究や研修など(久納誠司弁理士、56人)
知的資産活用/知的資産経営の推進、新ビジネスの調査など(中井宏行弁理士、30人)
知財キャラバン/出張での知財経営相談や弁理士イメージ向上推進など(須藤浩弁理士、15人)
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